渋谷~表参道~原宿を歩く、パレスチナ連帯マーチ「ジェノサイドの一年、抵抗の一年」に参加してきた。
集合時間には間に合わなかったので、ルートを確認して友人と表参道駅で待ち合わせ、歩いてくるマーチの列に途中から合流。雨降りだったので、二人で一本の傘を使い、ゆっくりと歩いた。プラカードを用意してこなかったので、すいかのFree Palestineパッチやいろんなピンバッジのついたかばんを歩道から見えるように肩にかけ、手を振ったりしながら大声でコールをしつづけた。声を合わせて「一緒に叫ぼう!」と叫んだり、合唱したりして、一緒に歩いた人たち、ここに来られなかった仲間たち、そしてパレスチナの人々に連帯できてよかった、と思った。ひとりがしっかりと一人分になること。「ここにいる」と見えるようにすること。隠され、見えないように追いやられるものを見せること、暴露。音を立て、声をあげ、無視できないように注目を集めること。耳をふさがせないし、目を逸らさせない。デモやマーチをやっていると、何か分からないながらもスマホを向ける人や、見てくる人がいる。そのたびに、これが種になればいい、と思う。
1時間弱歩いたなかで数人、中指を立ててくる若い男性や、怒鳴ってくるおじいさんに遭遇した(あえて「若い男性」「おじいさん」というふうにジェンダー表象に言及しています、これは男性ジェンダーの加害性や支配欲とも関係がある事象だと思うので)。おじいさんは明確にわたしと友人(二人とも「若い女性」に見える)に怒鳴ってきて、ああ、これは確実に「若い女性」を選んで怒鳴っているな、と思った。すぐ後ろの男性がそのおじいさんにさっと近づいていき、名刺サイズのカード(おそらくパレスチナについての情報、活動の意図等が書いてあるのだろう)を手渡していた。わたしはあやうく怒鳴り返すところだったので(プロテストではこういうときには無視するようにとグラウンドルールで決まっているのだが、わたしは本当に喧嘩っ早い)、わあっと感心した。対話を開始し、一方的に見える発話を双方向的なものに変えてしまう姿勢。本当にすごいなあと思った。多分おじいさんも、怒鳴ったら応答されてしまって、対話がはじまって、ちょっとびっくりしたのじゃないかな。デモやマーチは一方的な主張や叫びに聞こえるかもしれないけれど、そうではない。「一緒に叫ぼう」「仲間になろうよ」と言っているのだ。あなたがデモやマーチの叫びにどのように反応するのか、笑顔で手を振るのか、列に加わるのか、無視するのか、耳を塞ぐのか、怒鳴るのか……いずれにせよ、すでにあなたは巻き込まれている。わたしたちは空間を共にしている。そこではどんなメッセージも一方的にはなりえないのだ。
マーチの列に中指を立てていた男性に対しては、列の前を歩いていた男性が手を振って、投げキスをしていた。す、すごい……。これまたわたしは中指を立て返してしまうところだった(売られた喧嘩を買いがち!)が、ああそうか、憎しみには愛で返すのか……と、自分の立ち位置を反省した。わたしはマーチに参加して歩いていても、銃で撃たれないし、爆弾も催涙弾も投げつけられないし、上から空爆されることもないし、ナイフや斧で切りつけられることもないし、AI搭載のドローンに狙われることもないし、逮捕だってされない。命を懸けることなく、安全にプロテストできる権利がある。そんなわたしがやるべきは、中指に中指で、怒声に怒声で対抗することではなく、特権をきちんと行使して、対話をあきらめないことなのだ。わたしはより理性的に、より平穏に、より楽しそうに、対話をはじめることができる。なぜなら、感情的に泣いたり叫んだりするほどに追い詰められ、抑圧され、言葉を封じられ、自由を奪われてはいないからだ。わたしにはまだそれができる、そういう立場なのだ。自分が置かれている平穏さという特権を使わなくては、と、投げキスをするひとを見て感じた。(もちろん、イスラエルによるパレスチナの占領、虐殺、民族浄化を毎日見ていて、平静にいられるわけがないし、怒りも悲しみもとてもたいせつなものだ。その感情を抑圧する必要もないし、隠すべきでもない。ただ、自分の特権性を考えたときに、別の手段やアプローチを使えるときには使いたい、余裕がある分まだ自分にできることを捨てたくない、と感じたということ。わたし自身がそうしたいという話であって、安全な場所にいて特権性をより多く有しているからには感情的なアプローチをすべきでないとか、怒りを表明すべきでないとか、そういう話では決して、決してない。怒りも悲しみも、ちゃんとそこにあるものとして扱うべきだ。感情的であるよりも理性的であるほうがよい、という話でも決してない。感情は理性に劣らない。)
マーチ終了後、国連大学前のマーケットを覗いて、BRODという広尾のパン屋さんのサワードウブレッドとラスクを購入。サワードウブレッドが植物性だってことはじめて知った(そこのお店だけ?)。マーチを歩いたひとたちがそこここで休憩していて、うれしい光景だった。
ゆっくり歩いただけなのに、思ったよりずっとへとへとになってしまった。意識が散漫になり、言葉が出てこない。甘いものを食べなければ……となって、以前行ったことのあるおいしいパンケーキ屋さんまで、10分以上の道のりを言葉少なに歩いた。
わたしはパンケーキにリンゴバター(という名のジャム)、フレッシュミントチャイ。友人はホットチョコレートソースをトッピング、アールグレイを注文していた。


フレッシュミントチャイ、ミントの量がマングローブである。パンケーキのトッピングは、どちらもスパイシーでほんとうにおいしかった!そしてレモンをつけてくれるのがうれしくて……。爽やかな香りと酸味に、バターや生地の甘みがぴったりなのだ。APOCのふかふかなパンケーキが大好き。不思議な香りのアールグレイ茶葉も買った。
甘いものを食べて体力が回復したので、学芸大学に移動してSUNNY BOY BOOKSへ。池田彩乃さんのろうそくブローチと詩を受け取りにいった。友人は33番、わたしはお隣、34番のろうそく。包装してくれた店員さんが、ひとつひとつ確認しながら「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と口に出していて、それがあたたかな、魔法みたいな、ずっと覚えておきたいようなあかるいシーンだった。
店内が混んできたのであまり本を見る時間もなく、さっと退店。なにか軽く食べたいね、と言いつつ歩いていたら、高架下に新しい本屋さんを発見した。入ってみたら大当たり!COUNTER BOOKSという本屋さんで、わたしが読みたい本全部置いてあるんじゃないかというくらいの、広くてコンセプトのしっかりした素敵なところだった。反体制の本ばかりが並んでいて最高だし、気になっているZINEも置いてある。店内が割と広いので扱っている本も多く、本棚の見応えがあった。友人とあれこれ話しながら一周し、おなかがすいたのでお店を出た。本屋のはしごがいちばんいいです。
kitoでワインと夜ごはん。ぎりぎり席が空いている時間にすべりこむ。めずらしく赤ワインを頼んでみた。

モロッコ風ラタトゥイユ、無花果とシャインマスカットのカプレーゼ、松の実とバジルのフォカッチャ、大葉のジェノベーゼを頼んだ。目移りするメニューの多さ、もっともっといろいろ食べたかった。とてもおいしかった!




友人とはひさしぶりに会ったので、ゆっくり過ごせてうれしかった。
食後にまたCOUNTER BOOKSに寄り、40分くらいかけてもう一度店内を一周し、うーんと悩みながらも結局本を買わなかった。本を買うのって勢いが必要かもしれないな。最近本を読むことができなくなってきていたので、それもあって買えなかった。ざんねん。でも本は待っていてくれるからね。
駅まで向かう途中にあったクラフトビールのお店で、缶のビールを買って帰った。こちらには入店から購入まで勢いがあった。かわいいデザインのお高めのもの(1300円!)を買って、「高いから、ほんとうに落ち込んじゃってどうしようもないときに取っとく!」と宣言。……明日のわたしに刮目せよ。
帰りの電車で池田彩乃さんのろうそくブローチと詩を開封し、友人と見せ合いっこした。わたしは「うれしい歌」という詩を選んだのだけど、「うれしい歌」と口に出すと、ふしぎとうれしくなってくる。おまじないの呪文みたいに、「うれしいうた、うれしいうた」と唱えたくなる。胸の底からくすぐったくなってくるような、そういうなんとも言えないあかるいうれしさ。「うれしい歌」を自分で選べてよかったな。光っていたい、という望みを思い出させてくれる、したたかなろうそくと詩だった。