前日の疲れと、数日仕事をしていなかった(仕事関連のことはいろいろしていたのだけど、足もとの受注仕事をしていなかったという意味で)感覚をひきずって、なんとなくぼーっとしてしまう。ぼーっとついでに、日本語でぼーっと見られるドラマとして、件の宮藤官九郎脚本ドラマ『不適切にもほどがある!』を視聴。これを怒り心頭にならずに、気持ちにささくれをつくられるような気持ちにならずに、はすむかいに薄目でぼーっと見ることもできてしまう自分の特権性を思う。
おそらく多くの方が考えているように、私もこのドラマの着地を見届けるまで評価は保留にしたい。見届けることができれば、だけど。「え、まさかこんな、浅いも浅い、スカッとなんとかみたいな内容で終わるはずないよね?」と思っている。それは、脚本を書いているのが宮藤官九郎だから、ということに尽きる。
といっても、このひとの描くものに対して、例えば野木亜紀子作品のような一定の信頼、安心を覚えているわけではない。宮藤官九郎が書いた昔のドラマを近年再放送やサブスクで見返し「うわあ……」となったことはたびたびある。でも、このひとが書くものは年々変わってきている、という感覚をもったこともたびたびある。それが宮藤氏の変化によるものなのか、それこそ時代の要請(本意ではないもの)なのか、わからないけど。
そして何より、私はこのひとのラジオを、「ACTION」を、「宮藤さんに言ってもしょうがないんですけど」を、全部ではないけど聞いてきた。あの時間を経て今書くものがどう着地するのか。今回も「このひとはずっと変わり続けるんだな」と思えるようなものをまた見ることができるのか。それを見届けたい気持ちがある。
しかし、仮にこれから『マンハッタンラブストーリー』ばりの大逆転が起こるのだとして、その期待を感じさせるものが今のところドラマ中にはないのが気になる。第3話に至っては、本当に宮藤氏が書いたのかという疑問すら浮かんでしまった。
私は『コタツがない家』(別の局の別の脚本家のドラマ)を第1話で見限ってしまった。あれも「まさかこのトーンで最後までいくわけではなかろう」という期待はあったけど、その過程につきあえる気がしなかった。それとこれとの違いは「クドカンか否か」しかない。こんな、スカッとなんとかみたいな調子で終わらないでくれよ……。
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午後は書きもの仕事。登場する企業や人物の下調べをして、依頼者からもらったインタビュー音声を聞き返して、全体の構成を考え、実際に書き出す。材料を頭の中とテキストエディタで、混ぜてこねて成形するような工程。インタビュー内容が充実していると成形まで進めやすいけれど、ふわっとした内容で終始しているときは混ぜてこねる時間が長くなりがちになる。そのプロセスは嫌いではないが、そのプロセスを経て「これだ」というかたちが定まったとき、頭の中でカチッという音がしたような気持ちになるときにはやっぱり安心する。
今日はエンジンのかかりも悪く、そうなるのに想定よりも少し時間がかかって、「この時間にここまで進んだらいいな」のラインは超えてしまった。明日は祝日(企業からの連絡はほぼ来ない)というのもあって、ちょっとゆるんでしまったかもしれない。自分の収入状況を考えると、ゆるんでいるひま全然ないんだぞーーー。
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SNSを見ていると、『殺人者のパラドックス』がおもしろいらしい。見るつもりはあるのだけど、まだそこまで追いついていない。『光る君へ』も毎回ギリギリ視聴だし、100分de名著のローティ回もまだ見てない。ながら見ができなくなってしまい(ちゃんと集中して見ないと、中身をちゃんと味わえないようになってしまった。もともと、ながら見でもちゃんと味わえていると思えていたのが錯覚だったのかもしれないが)、「動画を見る時間」はそれほどたくさん確保できない。
タイムラグがあってもサブスクなどであとから見られるのであれば不都合はない。不都合があるとすれば、自分が見る前にSNSで評価を目にしてしまうことだ。『不適切にもほどがある!』も見る前にSNSでの評価をさんざん浴びてしまい、もはやそれ込みで見ているとこがある。それはもうSNSがある限り不可逆であるし、見て感情が動いたらそりゃあ書きたくなる。1人ひとりのタイミングでそれが行われていて、そのピークが放送直後というのは当たり前の話なので、そこにタイムラグがある私が避けるほかない。
ストーリー上のネタバレは、ジャンルにもよるけどあんまり気にしていない。とはいえ『殺人者のパラドックス』のような作品ではやはり避けておきたいが。それより自分が気にしているのは、視聴した方の感情の波や気づきどころを先に見てしまうことで、自分がいざ視聴するときにその情報を背景に敷いて見てしまうことだ。例えば『光る君へ』は私のTL上では好評価のコメントが多く、ストーリーというより感情の“ネタバレ”を見てしまった気持ちになる。道長にどういう感情を抱くか、それは私が私のものとしてさらの状態で見極められたらいいなと思うので、話題の作品があるときにはSNSは気持ち薄目でいようと思っている。何より、気になるものは早めに見よう。っていうか『ミセン』も途中で止まってるんだ〜〜〜。
(2024年2月11日付の日記)