Skebが初めて納品された!(魚さんへ)

むくろ2号
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公開:2023/12/7

人生で初めてSkeb(以下スケブ)を依頼して、初めて納品された。感動と共に絵に対する感想をここに書き記す。

依頼したのは魚さんという素晴らしい廃墟……もとい背景画を描かれる方。頻繁にネットで活動実績をあげており、一時期かなり話題となったNFTでの活動をまとめた本にも出演されている。詳しくはこちら▶︎クリエイターの世界を広げるNFTガイド 2023

それでも本業どころか素性すら一切不明で、唯一わかっていることはお仕事が忙しくておそらくろくに休日を取っていないことだけ。なので私は本物の人外説を推している。とにかく筆が尋常ではなく速すぎるので、多分腕とか千手観音みたいになってるし頭が阿修羅みたいになってると信じている。それはそれとしてご自愛ください。

さて、今回私が依頼したのは自創作「キャンバスワールド」の外側の世界を描写してほしい、という内容だ。自創作キャンバスワールドについては語ると長くなるので各自勝手に調べてくれることを願い割愛する。詳しい依頼内容等はこちらをご覧いただきたい▶︎該当のスケブ

初めて作品を目にした時、あまりの世界の壮大さに体が吹き飛ぶような感覚を覚えた。そしておそるおそる全作品をダウンロードし、そこで初めて全貌を目にして思わず感涙してしまった。涙腺が乾燥しているため滅多なことでは泣かないが本当に涙が出そうになった。あまりの神々しさに直視できないが、永遠に見てしまう魅力もふんだんに含んでおり、見ては室内を歩き回り、見ては室内を歩き回り、勢いあまって家にある運動用の自転車を漕ぎはじめ、疲れて横になったりを繰り返して、30分ほど本当に何も手につかなかった。浮き足立つという言葉があるが今なら本気で浮けると謎の確信さえあった。

作品の中で最も感動したところといえば、やはり魚さん自身によるキャンバスワールド世界への深掘りが書かれたメモ書きや追記文章だ。私は今の自創作を始めてから他人にキャラ単体のFAを描いてもらいたい欲求があまりない。描いてもらえれば人並みに嬉しいが、誰かにお願いしてまで描いてもらいたい欲は恐らく他人よりかなり少ない。代わりに他人からの自創作解釈や自創作ネタの提供で簡単に喜びで爆散する。あまり強い言葉を使いたくないが、今回はまさに解釈でぶん殴られたとしか言いようがない。他人からの解釈が追加されたことで世界観の奥行きが一気に広がり解像度が加速度的に高まったのだ。

元々始まった理由からして自分に負担をかけないためにゆるめに始めた自創作なので、なんとなく「キャンバスワールドの外の世界は荒廃しているんだろうな」としか考えていなかった。たったそれだけの文章で「外の世界には未だ汚染物質を垂れ流すプラントが建っている」「放置された兵器が救難信号をだし続けている」という数々の奥行きが広がる設定が生えてきて、魚さんの発想力にも非常に驚いてしまった。どれほど数多くの作品を摂取し噛み砕き自分の中で再構築していけばこれほどまでに素晴らしい解釈を育てられるのだろうと深く尊敬をしている。

空の色も残酷なまでに美しい。私はただなんとなく「黄色っぽい汚染物質で空は緑っぽくなってる」としか考えていなかったが、そこから発展して雲が夕焼けのような赤に染まっているのを見て、この世界の光の反射まで研究されている方でいらっしゃる?と本気で考えはじめてしまった。どんなに崩れ荒れ果て醜い争いが繰り広げられていても、空だけは変わらず美しい。一部砂漠化した草木も生えぬ地上を見下すように悠々と雲は揺らめいている。

またパッと見では気づかないところにまで繊細な仕掛けが施されていることにメモ書きを読んでハッと気づいて驚愕した。特に建物の隅っこで洗濯物を干しているところなんかは感動を通り越して「魚さんはこの世界から来た住民そのものなのでは?」とまで疑ってしまった。絵が妙に横長だなと感じたのも仕掛けで、どこでトリミングして背景参考画にしてもいいようにあえて横長で描いていると本人から説明があってもはや恐怖すら覚えはじめてしまった。人間凄すぎるものを見ると逆に怖くなってくるものだ。

さらにさらに「あ、これたくさんきゅうり作りすぎちゃったからオマケね」と言わんばかりのノリで夜や夕方差分まできて、もう私はどうしたらいいのかわからなくなってしまった。そんな作りすぎちゃったからみたいなノリで夜差分って生えてこないと思うのだが。夜差分の空に注目していただくとオーロラのような美しい黄緑のモヤが広がっているが、これも実態は汚染物質による薄汚れた瘴気であろうと嫌でも想像させてくる。建物内のまばらなライトアップによって「この凄惨な状況下でも誰かが確かに生きている」実感が湧いてくる。少ない資源の中どうにかして電気を引いてきた何者かの苦労さえ垣間見えてくる。手前の凄惨な世界のことなど知らぬ顔で煌めく後方の壁に覆われたキャンバスワールドは、安全圏で生きていくことを拒絶された者に対する残酷な美しさを秘めている。

これは生きている。私は生きている絵を描きたいからわかる。これは、この世界は、生きている。呼吸をしている。営みがある。生がある。全てが画面越しにわかる。こんな絵を描けるようになりたいが全て詰まっていた。

スケブで依頼した際「この絵を参考にして自分なりに再解釈し背景画を描きたい」という旨を伝えたが、果たしてこれは再解釈できるのだろうか。解釈が完成されすぎている。それでも私は私の世界を確固たるものにするためにやるしかないのだ。膨大な情報量の波に揉まれながらこれと向き合う必要がある。

改めて、素晴らしい絵を納品してくださった魚さんに感謝を。依頼文と資料URLの大量の情報量を丁寧にすくいあげて、ひとつひとつ作品の中に練り込めて作りあげてくださった新たなキャンバスワールドの姿を大切にしていきたい。今後の活動に生かしていきたい。

本当にありがとうございました!!

@mukuro2go
かなり思想強めの文章置き場。基本自戒のための覚え書き。