
ロンドンの郊外には、限られた日に見学のできる本物の風車が4つあるという。ウィンブルドン、クロイドン(シャーリー)、ブリクストン、アップミンスター。まるでイギリス通のような顔をして、いや、特にそんな顔はしていないつもりだけど、ともかく、個人的な旅行で何度も訪問していながら、私はそのことをまったく知らなかった。世の中には私の知らないことがたくさんある(※上の写真はウィンブルドン風車の外観)。
今回は「オープン・ハウス・ロンドン」という建築公開イベントに合わせて、ウィンブルドン風車とシャーリー風車の2つを見てきた。自分にしては長めの旅行の最初のころで、財布のひもを引き締めるぞ! となかば意地を張って公共交通機関のみで回ろうとしたためいろいろと不注意不具合が頻発して2つで終了してしまった。が、うまく情報収集して計画を立てて、接続の悪いところはタクシーやレンタカーも使いこなせば「ロンドン風車満喫ツアー」を組むこともじゅうぶん可能だろう。
ウィンブルドン風車の中には充実した博物館が入っており、たくさんの模型の展示で風車の歴史を一望できる。1日でイギリスの風車にだいぶ詳しくなれた気がする。

初期の風車は台の上に載った三角屋根の木製の小屋のような形の「ポスト・ミル」で、風向きを追って本体ごと回転するようにできていた。

「スモック・ミル」。作業着(スモック)を着たような姿なのでそう呼ばれた。メインの羽根だけではなく後ろにも小さな羽根をつけることで帽子(キャップ)の部分だけを風向きに応じて回転させられるようになった。

石造りやレンガ造りの「タワー・ミル」。建てるのにお金がかかり、足りない場合は木材でできたスモック・ミルが選ばれたので、スモック・ミルとタワー・ミルは並行して建てられていたらしい。なおウィンブルドンはポスト・ミルからスモック・ミルに改築されたそうだ。

ウィンブルドン風車は19世紀後半には粉ひき風車としての役割を停止し、内部をいくつかの私室に仕切って貸し出していたという。裁縫職人の女性が黒猫とともにひとり暮らししていた様子を再現した展示があって大変ぐっときた。もし19世紀の英国に転生するならこんな感じにひっそり暮らしたい。住みたくないですか、風車。住所は風車。または灯台でもいい(妄想)。
なお今回は時間がなくて寄れなかったが足元のティールームも大変人気のようでお客さんがたくさん来ていた。ウィンブルドンの町は緑が多く、かつ交通の便もよさそうで過ごしやすそうな雰囲気だったので、いつかそのうち滞在してみたい。