「世間一般ではこう思われているけど、実はね……」
「他のどこにもない真実をあなただけに教えてあげますよ……」
と、囁きかけられるのが人は好きだ。得をしたり、賢くなったりした気分になれる。限定情報でライバルに差をつけろ。そういうほうがたぶんバズるし儲かる。古今東西、煽情的、というやつだ。
私はどうも、そういう感じの力強い型にそって書くのは苦手のようだ。ここにしかなさそうな目新しい情報やどうしても伝えたいことがあれば、読みやすい文のなかになるべく滑らかに埋没させるほうが好きだ。急いでいる人にはすっ飛ばされるくらいでいい。まあ、伝わらなかったり、正反対に誤読されたり、文脈無視の我田引水されてるのを見かけると、あーあーとは思うけど。でも、結論をはっきり書かずにおいたことがきちんと伝わった時の嬉しさはひとしおである。
内容に自信がない?そうでもない。目立ちたくない?それはあるかも。影響力を持ちたくない?そんなことはないと思う。人並みに評価されたい願望はある。虚空に向けて耳寄り情報をただ投げ続けているつもりはない。私の居心地のいい方向に世界を変えてしまいたいという意思は、ある。そうされたくない人は気をつけて。
エメリン・パンクハーストのような怒涛の大扇動もできないし、エグランタイン・ジェブのように命を削って善き目的に全部使うのも難しそう。ではあるけれど。倣いたい気持ちは、ある。
しんどいし、儲かってないし、怠惰だし、小石ほどの影響力もないけれど。まだ今のところは辞める気はない。