ロンドン南東部のカナリー・ウォーフにあるロンドン・ドックランズ博物館に行った。運河沿いの倉庫を改造した施設で、国際港湾貿易都市としてのロンドンの歴史を解説している。
19世紀の荷車。
大小さまざまな木の樽。19~20世紀。
チーズ運搬用の手押し車。相当でっかくて硬いチーズだったのかな。
港の飲み屋を再現したカウンター。18~19世紀のイギリスの飲み屋といえばこれこれ、亜鉛系合金(ピューター)のビールジョッキ(タンカード)。
こういうのがいいんだ、こういうのが。あっちこっちとスマホでどんどん写真を撮る。いつ何の参考資料に使うかわからないからね!(そして使われる日はだいたい来ない)
奴隷貿易が19世紀に廃止されても現在にいたるまでのロンドンの発展に影響を与え続けていることを説明する展示。
奴隷廃止運動にかかわった女性についての展示。
この博物館には15年ほど前にも来ている。展示内容が変わっているのかどうかずっと気になっていた。2000年代当時から、ロンドンと奴隷貿易のかかわりや非白人系の英国史に関するパネルは多かった覚えはあるけれど、BLM運動の広がりを経てさらに踏み込んだ記述が足されているように思う。
ただし新たな展示を導入するというよりは、もともと収蔵されていたものを批判的に見直し、視点を変えて読み替えるという作業が行われたのだろう。「自分たちの生きている現在が奴隷貿易の歴史の上に成り立っているとわかって、どう感じた?」「不安になった? 怒りを覚えた?」と見学者に感情の表明をうながすコーナーがあった(残酷な歴史を知って衝撃を受ける子どもなどに対する心理的なケアのため)。
1980年代の大規模なドックランズ再開発計画への反対運動の展示。「コミュニティの死」を弔う。
見学ルートの最後のほうには、20世紀に入ってからのドックランズ再開発計画とそれに対する反発の流れが展示されている。「歴史の視点はひとつではありえない」「過去は現在と切り離された物語ではなく、今ここと地続きである」というメッセージが伝わってきた。