「たくさんのふしぎ」2023年11月号『ロンドンに建ったガラスの宮殿 最初の万国博覧会』の文章を担当した。THORES柴本先生のイラストで、たいへん美しい本に仕上がった。10月初頭に発売され、手にとっていただいた方にはおおむね好評のようでほっとしている。
172年前のできごとをオールカラーの絵本にしたことになる。世界をおどろかせた一大イベントなわけで、たくさんの記録写真やカラーの水彩画なども残されてはいる。それでも10万点以上の出品があったというから、個別のものひとつひとつの色がすべてわかるわけではない。
ということで、これは本に登場させたいな、と思ったものはできるかぎり情報を集め、何でできていたか素材を確認したり、批評や説明や見た人の発言を探したりしたが、わからなかったものは想像で塗っていただいた。今も実物が残っていて博物館に収蔵されているものもあれば、どこかに消えてしまったと思われるものもある。ヴィクトリア女王が何かを気に入って買ったという伝説もあり、一部はロイヤルコレクションに入っている。万博女王お気に入り伝説は本当に多い。夫アルバートが率いた計画の成功に大喜びして通い詰め、時計や陶磁器や布などあれこれ注文したらしい。
Illustrated London News 1851年07月19日号
‘Bashaw’ Matthew Cotes Wyatt, c.1832–34
作業も終盤になってから、当時の新聞報道の挿絵に描かれていた犬の像とおぼしきものの写真に行き当たり、あっこれ色が塗ってある! ブロンズ像じゃない! と大興奮で着色時にお伝えし、ブチ模様に塗っていただいた。その節はたいへんご迷惑をおかけした。しかし万博図説本は世に数あれど、このワンちゃんがブチ模様で登場する作品はめずらしい……かもしれない。心ひそかに満足している。
(簡潔に気軽に書き散らす場所にしようと思っていたのに意外と長くなっちゃったな。文体もブログっぽくなった)