総合病院

murasaki
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下の歯茎に埋まった親知らずを抜くには、口腔外科のある病院に行かなくてはならないという。家のいちばん近くにある歯科医院は今まで出会ってきたなかでもっとも腰の低くて丁寧な医師がいて居心地がいいのだが、そこでは歯茎を切り開くような手術はできないのだ。病院に行くのはいつだって憂鬱だが、総合病院のような大きな病院に入ることができるのはちょっと楽しい。大抵の場合、総合の受付があり、そこから各々の科に振り分けられて、廊下に貼ってあるテープの色などを参考にエレベータや階段を使ってそれぞれの科の受付窓口まで歩いて行くことになる。毎日たくさんの患者が訪れるので、受付のスタッフや看護師、医師までもが人を捌くことに慣れていて、忙しない市場のような雰囲気さえある。ひとつ受付をしたらまた次の受付へ、往診の次はレントゲンへ、次々と誘導されてくるくると建物内を巡る。階やエリアごとに雰囲気やスタッフな感じも変わり、まるで一つの街のようだ。病院といえば待ち時間の長いイメージだが、こういった病院だと逆に素早く動かなくてはならない。スタッフのオペレーションのリズムを崩さないように、てきぱきと動くのだ。移動している間、荷物を持ってどこかへ向かう途中の医師とエレベータで乗り合ったり、お昼を買いに行く看護師とすれ違う。廊下には担当医の当番表や点検のお知らせなんかも掲示されている。自分にとっては非日常の場でも、ここには生活が、日常があるのだと思う。