ここ数か月で特に気になったのは以下六組。
・ハシリコミーズ
「たまには下と比べましょう」を初めて聴いて「天才っているんだな」というのが最初の感想。自分たちのやりたい音楽を真っすぐに演奏していて、ある種押しつけがましくもなりそうなのに、そこには心地よさしかない。このオーラと自信は若さゆえか、持ち前の性格か…と理由を探していたところ、ギター・ボーカルのアタルが有名アーティストの息子だという記事を見て納得した(本人が積極的に発信していないのに書くのはどうかと悩んだので、せめて名前は伏せておく)。
父親譲りの皆を引き付ける力強いボーカル。ニヒルな雰囲気と素直さを併せ持つ歌詞。男女ツインボーカル好きにはたまらない声と声の重なり合い。ギター、ベース、ドラム、どれを取っても心地よく、熱くかき鳴らしているのに熱すぎない絶妙な温度感。キャッチ―で爽快なメロディ。この若さ・がむしゃらさが三人の素から出てくるものであれば合点がいくが、もし計算したうえでのことなら恐れ入る。
少なくともライブハウスのキング&クイーンズにはなれる器。チューニングが合えばあっという間にCDTV・Mステ・紅白も行けると思えるほどの魅力。フェスのトリを飾っている姿も目に浮かぶよう。とにかく、才能が溢れて溢れて仕方ない!というのが音楽を通じて伝わってくる。最近リリースされた「悪いようなことばかり」も最高。イントロを聴いて「天才っているんだな」とまた感じた。ぜひライブで聴きたい。
・a子
自己プロデュース力が高く赤髪のビジュアルがとても素敵。少し前から聴いてはいたけれど、先日リリースされたEP「Steal your heart」から「racy」が良すぎてドはまり。「racy」のややオリエンタル・中華風のイントロがとても可愛い。ただ、そのイントロに負けないくらいに耳をぐっと掴まれるウィスパーボイス。サビになると一転、力強さを感じる歌声で表現力も抜群。
「太陽」のような落ち着いたサビの曲もとても似合う。BPMも速めでポップスなんだけれど、歌い方や声質のせいか、波に揺蕩うようなゆったりした雰囲気、どこか陰のある雰囲気が素敵。今っぽい声質だけれど実力に裏打ちされていて聴き心地が良い。薄明かりの部屋でずっと聴いていたい。
・乃紫
「接吻の手引き」「先輩」と良曲が続いて注目していたアーティスト。絶対に相対性理論の誰かがプロデュースもしくは音楽に関わっていると思ったけれど、今のところそういった情報はない。歌詞の言い回しや短調のメロディが相対性理論っぽくて肌になじむ。
それから「ホットレモン」を聴いて、aikoやYUIを初めて耳にした時くらいの衝撃を感じた。こういうのもできるのか!という驚き。女の子の毒を描く、ややシニカルに寄った作風だと思っていたので、あまりにも真っすぐな恋愛ソングを歌いあげるので驚いた。元々好きだった声質は「ホットレモン」で更に磨かれ、透明感に溢れている。誰からも嫌われない声質だと思う。この曲がとても良くて、もう一押し、二押しあればすぐに人気アーティストとして各番組に呼ばれそうと思っていたところリリースされたのが「全方向美少女」。最初に聴いた時に、明確にSNS受けを狙った曲だったので勝負をかけてきたなと思ったらとっくにTikTokでバズっていた。Bメロが心地よいこと。このキャッチ―な相対性理論感をメインに据えつつ時々「ホットレモン」のような曲で驚かせてほしい。
・TOMOO
こんなアーティストが令和にいて嬉しい。TOMOOの良さはとにかくその唯一無二の声質。ユーミンを彷彿とさせるややハスキーな歌声。「夢はさめても」を聴いた時に、あまりにも完成されていて感動すら覚えた。
TOMOOも、運とタイミングに恵まれたらすぐに朝ドラ主題歌からの紅白出場の画が見える。「オセロ」も好き。ピアノが好きな人が作った曲だなあと感じる。Bメロの歌い方なんて最高。こんなに良い曲をありがとう。世界観が確立されていて、アーティストとして強い魅力がある。先日のオールナイトニッポンXも良かった。正直、今回挙げたアーティストの中で確実に売れるのはTOMOOだと思う。今年中に絶対、ライブに行きたい。
・NIKO NIKO TAN TAN
声質と曲調と世界観がとても合っている。歌い方が特徴的だけれどけして嫌な感じはなくて、うっとりするような耳心地。「Drama」のサビなんて美しくて目を瞑って聴き入ってしまう。キャッチ―なのでCMソングにどんどん起用されてほしい。実際「Jurassic」はリリースされて聴いた後に某企業のラジオCMに使われていて、思わずその企業のセンスの良さに膝を打った。
Spotifyではクリエイティブミクスチャーユニットと評されていたけれどその通りで、世界観が強めなので映像と音楽とでライブ感を楽しむアーティストだと感じる。各種フェスにも出演しているのでそこで聴くもよし、個人的には単独に行ってNIKO NIKO TAN TANワールドにどっぷり浸かってみたい。
・CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN
「花様年華」を聴いて「ここにも天才がいる」と感じた。ハシリコミーズ同様、某有名アーティストの血を引いていることは周知の事実だけれど、電子音楽に民族音楽が混ざってまた独特で特徴的なサウンドになっている。インストでここまで統一した世界観を出せるのは凄い。これはクラブにライブハウスにフェスに引っ張りだこでしょう。
アルバム「tradition」は一日通してずっとリピートしていても飽きないくらい、各曲面白くて聴き応えがあるのに飽きない魅力で溢れている。東京の路上で夜な夜な音を収録していたインタビューを読んだけれど、もっと実験的な音楽もやってほしいし、何ならライブ中の様々な音をそのまま使ってレコ発してほしい。次にどんな音を聴かせてくれるのか楽しみでならないアーティスト。
muque、サ柄直生、7co、LANA…他にも触れたいアーティストは多いですが一旦ここまで。