かけがえのない一曲は?人生で一番聴いているアーティストは?無人島に持っていく音楽は?間違いなく、揺るぎなく宇多田ヒカル。特に好きな十曲について。
COLORS
宇多田ヒカルの楽曲で初めて明確に「好き」だと思ったのはこの曲。トヨタのCMに使われていて、車が走る映像に合わせたサビの爽快感が好きだった。今聴くと平成初期感はあるけれど、この頃の宇多田ヒカルの近未来感のあるイントロが好き。Aメロはドラムの拍の取り方が一定ではないのが面白い。幼心には同じテンポなのにスピードアップ・スピードダウンするように感じられてとても不思議だった。Bメロで抑えてからサビの天に突き抜けるような爽やかさ。このサビの「青い傘広げて〜」が好きすぎて、しばらく青い傘を愛用していた。曲名を体現するような鮮やかな色の移り変わり、その例えがヒッキーらしくて素敵だなあと感じる。
また、カラフルなサビに向けて一番・二番のAメロで「灰色」「色褪せる」「白と黒」の歌詞でモノトーンの印象を植え付けているのが心にくい。サビのハイトーンの「青い空が〜」で一気に目の前に青空が広がる感覚になる。一番サビは「青空」、二番サビは「オレンジ色の夕陽」と曲の経過に合わせて空模様が変わっているのも素敵。キャンバスを自分の筆で自分の色で塗り替えていこうというメッセージ。詩的だけれど力強く、色褪せない大好きな一曲。
Celebrate
言わずと知れた名アルバム「HEART STATION」の曲順のとおり「Gentle Beast - Interlude」→「Celebrate」と聴くのが正解。元々一曲だったのをインスト用に切り離しただけだしね。
「Gentle Beast - Interlude」のインストを経過して「Celebrate」に入ることで、元々素敵なイントロが更にキラキラと輝く。リズミカルでお洒落なムードが漂うイントロから「ターコイズブルーの夜」の歌詞が最高。多くを語らないけれど、入りの二フレーズで一気に世界に引き込まれる。Bメロのファンキーさ。思わず体が動いてしまうようなリズム。ここでもパーカッションが効いている。そしてサビ。爽やかな夏の夜、華やかで楽しいパーティーシーン。高らかに歌い上げるのではなく、あくまでささやかにしっとりと語りかけるような歌い方でますます秘密めいた煌めきが胸に残る。
人間活動後のリアルなヒッキーの曲も胸に沁みて好きだけれど、この頃の詩的でロマンチックな世界観は本当にたまらない。大サビ後の、どこまでもこの素敵な夜が続いていくかのようなフェードアウトまで見事。2023年に出た曲と言われても全く分からないくらい、とにかくお洒落な曲。
道
曲を通して「ッタッタ・ッタ」という後打ちのスネアが特徴的な一曲。この曲はヒッキーが亡きお母様との関係を歌ったと知ってますます好きになった。肯定も否定もする必要なくて、ただ真っ直ぐに向き合った曲。
この曲はサントリー天然水のCMに使われて、まさかの本人が山登りする映像に驚かされた。そしてその姿とこのメロディに旅情を掻き立てられ、「道」を初めてフルで聞いた数時間後に新幹線を取り、自然と歴史を求めて京都一人旅をしたのは良い思い出。
歌詞に付いては歌っていることが全て。Aメロの「黒い闇の中に…」を聞きながら早朝、誰もいない道を歩いてどこかへ出かけるのにハマっていた時期があった。トラックはBメロの拍が複雑で面白い。この辺りから更に挑戦的な曲が増えたなあと感じる。サビもリピートされる歌詞が力強くて泣いてしまう。発売した年は誇張なく毎日聴いていた。今聴いても、何度でも心にグッとくる。
タイム・リミット
こんなに最高のトラックで始まるイントロがあっていいのかよ!フー!と叫びたくなる。Rodney Jerkins aka Darkchild!後打ちのドラムとラップからのニュアンスのあるメロディが好きすぎてイントロを何度もヘビリピしてしまう。ただ、そのイントロの全てを吸収して放つ一言目の「I know what…」の歌詞。圧倒的。本当にトラックがお洒落。過剰なほどのスネアの音と、時々入るウィンドチャイムが深みを出していて良い。かなりハイトーンの箇所もあるけれどハスキーボイスが映えること映えること。「Celebrate」と同じく聴いていたらテンション上がってノッてしまう。歌詞はやっぱり若いなあと感じる。その脆く甘い若さも良い。
Goodbye Hapiness
コーラスとピアノで始まるイントロ。物語性のある歌詞。世界観を創り出して伝えるのが本当に上手い。その上メロディも素敵、歌は言わずもがな。天才。余談。天才は宇多田ヒカルだけ、と思っていたけれど最近Vaundyもその節がある。
本題に戻って、Aメロでもうこの曲のテーマがすぐに分かるような切なさと優しさが溢れるメロディ。歌詞を追って空想するのも良いけれど、ヒッキーが可愛すぎるMVを観ながら聴くのも乙なもの。MVのCメロの後の暗闇のミラーボールは宇宙を感じる。平穏で優しい雰囲気が、ハ長調だからより引き立つ。この曲は甘い少年期を経てこれからも共にいる二人の曲だと思っているけれど、夢のように美しいメロディで逆にショッキングな映画とかに使っても映えるだろうなと感じる。切なくて甘い、美しいセロハンに大事に包まれたキャンディみたいな一曲。
Prisoner of Love
初期宇多田ヒカルの恋愛ソングの中毒性よ!破滅的で詩的でロマンチックで等身大で。この曲はメロディも勿論好きだけれどとにかく歌詞がもの凄く好み。一冊の小説を読んだかのように濃密。聴くたびに心から聴き入ってしまう。恋愛ソングとは言ったけれど、友情ソングも意識して作ったと何かの記事で見た気がする。感情を表す細かな言葉の違いなんてどうでもよくて、ただ相手への愛に溢れて溺れていることが伝わる一曲。
パクチーの唄
「ぼくはくま」系。つまり大好物。歌詞がシンプルだからこそ響くものがあり、小沢健二「ラブリー」並に穏やかな人生讃歌の曲だと思っている。「今日はお日様の…」のフレーズなんて平和を絵で描いたような優しい景色。遅めのお目覚めに、日曜日の晴れたお昼に、幸せな気持ちでぐっすり眠りたい時に、いつでも寄り添ってくれる曲。
この曲を聴いて元々好きだったパクチー愛が爆発し、パクチー料理専門店を訪れたりベランダでパクチーを育てたりした。
Play a Love Song
アルバム「初恋」が出て、早朝仕事に向かいながらイヤホンを耳につけ、初めてこの曲を聴いた時に感動して歩きながら涙が溢れてしまった。その時の空の明るさや植え込みの緑、何てことのない道端の風景まで胸に残っている。最初は単純に曲と歌詞の良さ。次にヒッキーの人間臭くて溢れんばかりの優しさ。そして、こんな曲をプレゼントしてくれるようになったんだ、人間活動でヒッキーが感じたささやかな幸せをお裾分けしてくれてありがとう、という気持ち。爽やかで穏やかな風が体を吹き抜けていくような一曲。
Kiss & Cry
サーカスの幕が開いたような始まり。ドラムが心地よいイントロ。そのまま始まるAメロ。ハイトーンのBメロ。語りかけるようなサビ。カップヌードル食べたくなる。「来年の誕生日までに…」という歌詞を何度呟いて奮起したか分からない。激しすぎず静かすぎず聴き心地がすごく良くて、プレイリスト「宇多田ヒカル」の先頭に入れている一曲。
time will tell
優しいハミングで、深い眠りからそっと呼び起こされて朝の光のなか瞼を開いたような感覚で始まるイントロ。子守唄のような鍵盤の優しいメロディから少しずつリズムが動き始めて、瑞々しいヒッキーの歌声が入ってくる。どんなに嫌なことや辛いことがあっても、この曲を口ずさめば落ち着ける。パワーを貰えるというよりは隣にそっと座って何も言わずに一緒にいてくれる友人みたいな曲。
…他にも「Too Proud - L1 Remix」「One Last Kiss」「Stay Gold」「HEART STATION」「Flavor Of Life」「真夏の通り雨」…挙げ出したらキリがない。ちなみに一番好きなMVは「FINAL DISTANCE」。世界観、最高。
前回の全国ツアーはチケ惨敗だったので、2024年は必ず行くぞ!