骨格タイプ診断では3タイプではストレート、7タイプではドラマティックに分類されるなど、元々華奢な方ではないのだが、ここ2,3年は様々な事情で殊に体脂肪が増えてしまった。第二次性徴以降で一番体重の小さかった大学時代と比べると+20kgと、なかなか迫力のある数字となっている。
これですっかり、好んで着ていたマーガレットハウエルが軒並みサイズアウトしてしまった。マーガレットはブランドの理念も含めて大好きなのだが、体型にシビアな点は玉に瑕だ。以前話を聞いたことのあるマーガレットの店員によれば、より身体に沿った裁断の多かった昔に比べると、今は流行がボックスシルエットに傾いているのもあってまだ多少はゆとりのある設計になってはいるらしい。しかし、今の私の身体はそのサイズも優に超えてしまった。
それでどうしたのかといえば、いずれ痩せる予定なのだからと、ユニクロやGUで、今の体型を凌ぐためだけの服を買うようになった。これらのブランドは色々と支持したくない理由があるので不本意なのだが、入るサイズで着たいと思えるデザイン・質と、出してもいいと思える金額とのバランスが自分にとってフィットする服がこれらにしかないので仕方ない。
ちなみに無印良品もXXLサイズまでサイズ展開があるが、たとえばワイシャツでいうと袖丈などは長く作られているくせに、袖の太さや身幅などはあまり大きくなく、実際には着られないことが多くて、「さては本気で太い人間に着せるつもりで作っていないな? 本音は『あくまで身長の大きな人向けなんです』ってところだな?」と感じた。対してGUの3XLはかなり思い切ったサイズで作られており、「本気で多様な体型を包摂するつもりだ……!」とこの件で初めて好感を抱いた。
所謂プラスサイズ向けのブランドを開拓すればいいのかもしれないが、それはわざわざ調べようと思わなければ目に入らないことがほとんどだ。私だって、みんなが話題にしているのと同じ服を着たいというのが正直なところである。未知の領域を開拓するには気合いがいるし、それが必要に駆られてであれば尚のこと動機として弱く、結局気持ちが向かなかった。
ちなみに、サイズの数値的には確かにプラスサイズの領域に片足を突っ込んでいるのだが、"大きいサイズ"で検索して出てくるモデルの写真を見ても、「あっこれ自分だな」となったことがない。やっぱり自分の体型は少数派なのだと思う。多分、モデルの体型は前後には薄く断面が楕円に近いのに対し、自分の身体は前後に厚いので真円に近い、というような違いなのではないか。径の数値=サイズが同じでも見え方が違う理由はそれではないかと推察している。それから、バスト・ウエスト・ヒップのバランスも、合わないことが多い。ドレスやワンピースなんかでは、ウエストとヒップのサイズを見ていける!と思っても、胸囲が身幅をオーバーして弾かれる。ともかく、私のような体型は一般的には想定されていないらしい。
そういうわけで、自分の人生上、長きにわたったファッション不毛時代の末に、ようやく見出した着る楽しみを再び失ってしまったわけだが、この度新たに解決策を得ることができた。ユニクロのコラボ商品である。
ユニクロコラボの嬉しいところは、コラボブランドの本来のサイズよりも幅広い展開が見込める点である。ユニクロのサイズ展開は最大で3XLまで存在しているため、本来そのブランドの服を着られるはずがなかった現在のサイズの自分にも道が開かれている。
今回リーチしたのは、ユニクロ×マメクロゴウチだ。なんか数年前に話題になっていた気がするそれは公式ではとっくに終売しているので、フリマアプリを駆使して買い漁った。
これがめちゃくちゃ楽しかった。みんなが話題にしてた服が、自分にも着られる!!!
マメクロゴウチのことはあんまり知りませんが(元々のファンの方すみません)、ざっと調べたところ本来のサイズ展開はかなりタイトそうだ。しかしブランドコンセプトや世界観は大変魅力的で、どうせ服を着なくちゃいけないのならそういうものを着たいと思う。これが痩せる必要なく今の自分にも叶うというのが、嬉しくて仕方なかった。
これまでは、いいなと思う服があっても毎回「痩せないと着られない」という壁にぶち当たっていて、「まぁ仕方ないか、太っちゃったもんな、痩せたら好きな服着よう」と納得していたつもりだったが、それは積もり積もって結構なストレスになっていたらしい。
普段見かけるほとんどのブランドからサイズ的に締め出されているというのは、ボディイメージを低下させるのに十分な影響がある。店頭で商品を見ても、店員に試着を勧められても、それをそのまま着られることはないので基本的に意味がない。先にネットショップでサイズをチェックして、入るのか入らないのか確認する必要がある。ウィンドウショッピングをしても、「どうせどれも着られないしな」と思いながら見ることになるので、全然楽しみがない。
タイミング的に自分にとって大きかったのは、ウェディングドレスに自分のサイズがないことで、13号を超えると本当に選択肢がなくなり、着たいデザインが全く見つからなくなるのだ。これがマジで最悪だった。結婚式の計画を白紙に戻した理由の半分くらいはこれにあると言っても過言ではない。
世の中が想定している(特に)女性の体格は、幅が狭すぎるし、痩せ型に偏りすぎていると思う。これでは摂食障害も減らないわけだ。特に日本では、自分のような乳も尻も出っ張っていて筋肉も贅肉もある体格は想定されていない。プラスサイズとしてすら存在していない。
フィンランドのサウナで水着を借りて、自分に合うのがMサイズだった時は、ホッとした。自分のサイズがmedium、つまり大きくも小さくもない中間のサイズと規定されているというのは、日本では経験したことがなかった。日本もこのくらいのサイズ設定が現実に即しているのではないかと思うんですが、どうなんですかね……。
好きな服を着られないのは太っている自分が悪いのだ、と長らく思っていた。健康を損なうような過度な減量に走らず済んだのは、元々食に対する嗜癖傾向があって食べることに対する執着が強く過食傾向だった(これはこれで過食方向の摂食障害になりかけてはいるのだが)のと、発達特性的に本当に気が向いたこと以外はできないからというだけだと思う。自分は別にそこまで自分の容姿は嫌いでないが、世間一般にどうなのかはまた別だからな……と思っており、本心では痩なきゃいけないなどとは思っていなかったということである。世間の評価から影響を受ける程度が比較的小さいのもまた発達特性的な部分だろう。そういった点で、私は自身の発達特性に守られてきたといえる。
今は、前述の通り今の体型なりに楽しめるファッションを見つけられたことやその他諸々の理由から、ボディイメージは大分回復してきたように思う。また冒頭を書いていた時期から時間が経って状況が変化し、最近は自然と減量傾向にある。このまま健康的な範囲で目標とする体型に辿り着きたいところだ。しかし仮にそこまで痩せても自分は、本来自分の理想とする、薄べったい中性的な体型になることはない。最近になってやっとその事実を受容でき、また自分の体型の持ち味を活かせる方向性のファッションも好きになれつつある。加齢によってか精神状態の安定によってか、以前よりもこだわりが緩やかになってきており、柔軟に着るものを選べるようになったことも大きな変化だ。今の自分が着られる服を作ってくれていたユニクロGUに感謝しつつ、そのうちまたマーガレットハウエルに戻っていけたらなと思っている。