あると東京だな〜と思うもの

mznmku
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23区の1/40ほどの人口密度の町から上京してきた感想。

  • 銭湯

    地元にいる時はスーパー銭湯しか行ったことがなく、昔ながらの銭湯は架空の存在だった。引っ越してまだガスの開栓が済んでないから近くの銭湯行くか〜ができるのは東京の特権。

  • 古い個人商店

    昔からありそうな店がたくさん並んでいると東京だな〜と思う。田舎にはイオンとチェーン店しかない。銭湯もそうだが、東京にはそれだけ昔から人がたくさんいたんだな〜と思わせる。

  • チェーン店でない店

    特に飲食店など、チェーン店以外に選択肢があると豊かだ。東京にいるな〜という感じがする。だから遠征で東京に出てきた時は貴重な機会なのでなるべくチェーン店以外を選んで食事をしていた。もしくはジョナサン、これも地元にはなかったので。

  • 徒歩圏のコンビニ

    地元では近くても自転車の距離。夜中にふらっと寄ったりできるのが嬉しい。メルカリの発送が苦でないのも助かる。

  • 夜景

    田舎にはそんなもの存在しない。高いビルも夜中まで灯りのついてる建物もない。だから夜景を見ると東京だぜ……と良い気分になる。

  • 有料の駐輪場

    田舎では自転車はどこでも無料で置き放題なので。2段ラック式とかだと特に。田舎は場所が有り余っているので、どこにでも平置きし放題だ。盗まれることもまずない。人がいないので。

  • 役所が自転車の距離

    普通は車で行くものだと思ってた。役所に自転車が無数に止まってるのは東京ならではだと思う。

  • ジム

    通える範囲に無い。車でわざわざ行くか……?

  • 団地

    「あの子は団地の子だから〜」みたいな台詞もよく分かってなかった。小中のクラスメイトの家は全員一戸建てだ。まず集合住宅がない。地方中枢都市の高校に進学して初めてマンション住まいの友達が現れた。団地を見かけるとおぉ〜団地だ〜と見てしまう。

  • 自転車乗る時手袋がいらない

    自転車に乗る時は20〜30分乗り、速度も出すので、冬場は手袋をはじめとしたガチ装備が必須だった。寒い地域だったのもあるが。東京では徒歩も可能な距離の移動を楽にするために使うので、手袋をしなくても耐えられる距離しか乗らないからすごいと思った。身軽だ。それに歩行者が多く道も狭いのでそんなに速度も出せないから、手や耳が冷たくならない。

  • 古着屋

    最初知った時は、一体何のためにわざわざ好き好んで中古の服を買うのか、それの何がお洒落なのか、全く理解できなかった。リサイクルショップしか知らなかったからである。

  • 数分置きに来る電車やバス

    これはもはや語り尽くされているだろう。地元では一本逃すと次が1時間後なのはザラだったので、発車間際でも駆け込むのを待ってくれることが多かった。駅と駅の間が広いので多少発車が遅れても間隔調整が容易いというのもあるだろう。だから「次の電車をご利用ください」のアナウンスは非情すぎるだろ!と思っていたのだが、この地では電車はいくらでも来るので一本見送ったところで何の問題も無いのだということを後から理解した。なお高校に登校する時は丁度良い時間の電車がなかったので、クラスで一番乗りくらいに早く着いていた。

  • トイレのない電車

    電車にトイレがなかったら、乗車中に催した時はどうするのだろう……と思っていたが、途中の駅で降りて用を済ませてまた来る電車に乗ればいいらしい。すごいことだ。

  • 交通系ICの意味

    地元では往復の切符を買えばそれで事足りていたので、わざわざSuicaにチャージして使う意味が分からなかった。東京で移動するようになって、こっちでは色んな乗り換えが選べるので切符を買う方が面倒だということが分かった。

  • 都市ガス

    部屋を借りる時のポイント的な記事を読んでいて「都市ガスの物件だとガス代が安い☆」とか書いてあったのでいいこと知った!と思ってチェックするようになったが、田舎で探しても全然なかったので全く意味がなかった。上京したら都市ガスがデフォでびっくりした。調べたら50%も普及してないらしい。そんなものをさも当然選べるかのように書くんじゃない。大学進学率より低いじゃん。

  • 気軽に行けるイベント

    上京する前は、気になるイベントの情報が流れてきても大抵泊まりがけになるので、スケジュールや予算の都合が付くかどうかがまず最初に考えることだった。これが上京すると、平日退勤後にちょっと足を伸ばすだけで行けてしまう。そもそも開催地の住所に「東京都○○区」の記載すら無いものも多い。全員が全員東京に住んでると思うなよと、区すら書かずに当然了解されるものと思っている傲慢さに腹の立つ反面、東京っぽくていい……と思ってしまう自分もいる。東京じゃなかった場合はなんだよ気軽に行けないじゃんと思いつつも、いいぞもっとやれ、東京が全てだと思っている連中に恥をかかせてやれとも思う。

総じて、あらゆる文化が東京を基準としている構造にムカつきつつも、その事実が生み出す「自分は今東京にいる」という実感に陶酔もしている。

東京に住むと、あらゆるものが自分に向けられたものになる。漫画やアニメ、映画やドラマの舞台は大抵東京で、そこには地方で生まれ育って東京の各エリアの位置付けや雰囲気など知りもしない人間にとっては感知できないニュアンスが付加されている。地方の人間にとっては、フィクションが(なんならノンフィクションも)全部知らん土地の出来事なのだ。例えば新海誠の『言の葉の庭』とか観ていて思ったが、あれは新宿がどんな場所か分からないと作品の味わいが変わってきてしまうだろうなと思った。それが悔しい。作品に込められた意図を、知らず知らずのうちに読み落としてしまうことが。そう思うようになったのは、上京してそのことを理解できるようになってからのことだった。これ一つとっても機会の損失だと感じる。

ニュースなんかのTV全般、それからネットで流れてくる情報も全部そうで、重大そうに報道されていてもそれがどれだけ人が多い場所での出来事で、どれだけの人に影響のあることなのか、また人々にとってそこで事件や事故があったことが、もしくは新たな店ができたりイベントが開催されたりすることが、どんな心理的影響をもたらすのかなど、全く知ったこっちゃない。東京に行ったのは中学の修学旅行くらいだった自分にとって、東京には新宿とか渋谷とか池袋とかそういう地名があるらしいということくらいで、それらがどんな位置関係にあるのかすらピンとこなかった。自分に実際に関係のある場所が話題に上がることはまずないので、TVでやってることは全て別の世界の話で、関心を持つこともあまりなかった。多くの人に関係があるから報道されているということすら分かっていなかった。ニュースなどのTVは常に自分とは関係のない内容を流すものだとしか思っていなかった。それが、東京に住むようになると、全てが自分に関係のある情報に変わる。「えっ、あそこでそんなことがあったの」とか、「へ〜、あそこにそんな店ができるんだ、ちょっと気になるな」とかになる。

でも、全国の人口の精々1割程度しか関係しない情報を、さも全ての人に関係あることのように流すのって、普通にどうかと思う。

その「あらゆるものが自分に向けられたものである状態」がデフォで、その状態しか経験がなく、そうであることにすら気付いていない人は、井の中の蛙だとも思う。所謂"田舎者"と何ら変わりない。そうはなりたくないなと思いつつも、それは生まれつきのマジョリティに対するルサンチマンでもあることも理解していて、本当は東京生まれ東京育ちで全ての情報が自分に関係のあることとして生きてきた人が羨ましくて、その後を追って東京に出てきたことは事実である。後天的に都民を体験して、喜んでいるのだ。だから、上記のような「東京っぽい」(「らしい」ではなく「っぽい」なのは、実際にそうであることを知っているというよりは、そう伝え聞いているだけであるためだ。悲しいね)事項をなるべくかき集めようとしてもがいている。

早く、そんなものに囚われている段階を超えて、他者評価に依らず自分が本当に良いと思えるものだけを集めた暮らしが出来るようになりたいな。

@mznmku
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