つい最近までわたしは、人と会話をする時「これが正解だ」と思いながら話していた。
「相手によく思われたい」「相手におかしな人だと思われたくない」という気持ちからそうしていたのだけど、その意識が染みついた結果、話していることが嘘だか本当だか分からなくなってしまうことがあった。
もちろん、悪意のある嘘をついているつもりはない。明らかな嘘もついていない。しかし、相手が求めていそうな言葉を無意識に選んで話してしまうので、本心とはちょっと違う発言もしてしまっていた。
今もその意識がゼロになったわけではない。特に仕事の場面ではその意識もスキルのうちだと思っている。
でも、信頼している家族や友人の前では、「相手によく思われたい」という気持ちを少しおさめるようになった。信頼とは、自分の気持ちを誠実に伝えることでもあるだろう。
職業柄、他人がインタビューを受けている場面に数多く立ち会う。頭の回転が速い人ほど、相手が求めている回答に沿って簡潔に回答する。
この作品を読んで仕事中のそんな場面が浮かんだと同時に、自分の言動を振り返らざるを得なかった。
◾️引用
「いずれにしてもこの話はわたしだけの問題になった。もう噓を糾明してくれる人はこの世のどこにもいない。」
「多分、早見さんはもっと正直に素直に、率直に、思ったことを言っても大丈夫ですよ。こんなふうにしようあんなふうに作ろうって、自分自身に対して思わなくても、すっごくおもしろい話だけしようって、気負わなくても」