「アイヌ文化の復興・創造等のナショナルセンター」である「ウポポイ」の渋谷公演を見てきたよ。第一部はアイヌを知るに欠かせない「カムイ」についての講演(授業)と、アイヌの口承文芸「神謡」の講演&実演。
私はアイヌについてほとんど何も知らなくて、ただ「民族舞踊を見たい!」という動機でチケットを申し込んだ。でも何事も事前学習をある程度しないと直前までワクワクできないタイプなので、「ウポポイ」についてちょっと調べようとした。そしたら、「ウポポイ 批判」という検索ワードが上の方に出てきた。その批判をまとめた主な記事は、美術手帖の「ウポポイ行ってみたレポ」的なモノ。言わんこっちゃわかることが書いてある。私なりのその記事のまとめ(感受的に)としては、「アイヌを『民族』として排除したまま『私たち』の視点でアイヌを語り、不都合なことは公にしないまま、ウポポイをテーマパーク、ユートピア化しているんでねえの?」という感じ。「私たちアイヌ」の目線じゃなくて「私たち和人」の目線で語れ、というのが記事の主張でした。歴史的経緯をもっと展示してほしい、という願望。私はウポポイ行ったことないからわからないけど、それはそうであってほしい。(批判だけではなくて、ウポポイが展示を通して「アイヌ自らが語る」ことを実現していることの評価もしているよ。)
じゃあ、ウポポイの方針を広島平和記念資料館にすればよかったのか?というのも違う。歴史(歴史ということに語弊がありそう)や当事者の声だけで、差別の様子などをありのままに伝えることも大事だし、今ここで語ることが文化の継承にならなければならないし、アイヌは消滅していないのでそのアイヌが当たり前に生きていく場所を生かし続けなければいけない。
色々自分の中でもこの記事について賛否両論あり言いたいことはありますが、とりあえず今日のウポポイはよかった。まず、公演を行う目的が最初にスクリーンにカッコよく映し出されるのだけど、それがよかった。記憶は曖昧だけど大意は多分、「今ここで上演するということは、カムイの世界への旅立ちの祝福であり、私たち(ウポポイの担い手)の文化継承の場になるということであり、皆さん(鑑賞者)にこの文化を知ってもらうことである。」ということ。ウポポイが東京で公演を行うのが初めてというのも、この目的に沿って東京にやってきたという感じがした。
そういう目的のもとで上演された演目は「イノミ」。パンフレットの説明を見ると、「アイヌの儀礼」『イヨマンテ』を題材に、ストーリー性のある演出で伝統の歌と踊りを披露します。」とのこと。あまり解説はされていないので私の解釈だけど、一つ一つの踊りは生活のさまざまなシーン(狩猟や食事、祈り)で行われるものだけど、今回の上演にあたってはその踊りのつなぎに少々小芝居を混ぜています、ということかな。うおおおめっちゃ親切で分かりやすい!!それをパンフレットにわざわざ書くのがいいよね。あまり馴染みのない舞踊を見る時、「なんだこりゃ?」となりがちだけど、そんなことはなかった。そういう紹介がされたうえで、今はどんなシーンなのかが後ろのスクリーンに文字や映像で映し出される。舞台芸術としてはダサかったかもしれないけど、潔くて、丁寧な伝え方でよかった。
いやいや、歌、踊り、衣装とかもめちゃめちゃよくて、舞台芸術としてのカッコよさは抜群だったよ。繰り返しのフレーズ(サケへ)が特徴的な神謡が高揚感を誘う。普通のパントマイムや動物のモノマネではない自然な動き、でもデフォルメされていて美。あとクセになる多拍子と上下のリズム、めちゃくちゃ綺麗な刺繍着物。ウポポイの展示や方針が云々じゃないって〜。こんなにイイ舞踊が今同じ国にあるって、初めて知りました。なんで授業で紹介されないのだろう、。もっと長く見たかったかも。演者が、最初は別に威厳があるとか圧倒される立ち姿とかではなくて、普通に立っているだけ(笑)なんだけど、1時間弱の演目を終えると、様子が変わっている。ニコニコしているわけではないんだけど、エネルギー感じるカンジ。私もやりたくなってしまったし、参考にしたいと思ったし、これが継承され続けてほしいな、、と思った。これがただの舞台芸術ではないことに注意。この上演を行うことが儀礼そのものだし継承なんです。
それにしても、「カムイ」という考え方、とても大事。祈りと感謝が舞踊と結びつく瞬間もやっぱりとっても美。。みなさんぜひ「アイヌ民族文化財団」のHP(https://www.ff-ainu.or.jp/)から色々学んでみてね。
さっき改めて美術手帖の記事読んだけど、そんな批判ばかり書かないで!もっとこの文化のかっこよさと継承の重要性を論じてくれ!と思いましたとさ。(批判することも大事だけどね。。) 「先住民族」と括ること、「文化継承」を行うことは同じ問題で捉えるのは難しい。こういうの横山先生の授業でやったな。