Meze Audio Empyrean(4)性能

Empyreanを装着して音楽をかけると、透明感はないし、暗いし、もわっとしてるなあと毎回思う。だがそれがいいのだ。野外ライブのようにスカッと抜けるのではなく、狭いライブハウスにいるような暑苦しさがいい。開放型でありながらこのほどよい閉塞感はなかなかない。まあ音の配置はもう少し見通しよくなってほしいが。

そういった部分を個性として楽しんでいる私にとっても文句なしにEmpyreanの弱点と言えるのは、情報量と音の配置、定位の収束なのだろうと思う。生ピアノを自分で弾いたときに聞こえる音を考えたら、そんなに音がピンポイントで定位する必要があるのかと疑問ではある。一方で、それがオーディオの醍醐味であり聴いてて楽しいことは否定できない。情報量についていえば、響きや共鳴音は明らかに間引かれている感じがあるし、本物と錯覚するかというとまだまだその域にはない。これらを考えると今はわりと満足しててもまだまだ情報量は上げる余地があると思われる。

高音や低音が伸びなかったり謎の圧迫感に悩まされたりで基本性能に目を向ける余裕がなかったわけだが、Empyreanをメインヘッドホンにして、TL3 3.0を導入した今、一定満足できる音が安定して出るようになっている。さらにクロックジェネレーターを導入したことで空間を感じる楽しさも垣間見えるようになってきた。こうなると性能を突き詰めたその先が気になってくるし、かつて夢見た本物と見紛うような音への欲求も出てくるというものだ。EmpyreanもTHA2もまだ性能的に頭打ちという感じはしないが、基本性能の限界を感じるようになれば、まずはEmpyreanがTHA2の力を引き出しきれているか検証するためにヘッドホンを更新し、ゆくゆくはシステム全体の入れ替えとなるだろう。