中音域の暖かみがあると言われるヘッドホンでピアノの音を聴くと、とろけるような甘みが感じられる。なに言ってんだこいつと思われるだろうが、他にうまい表現方法が思いつかない。旨味?甘み?柔らかさの中に弾力も感じられる。食感で例えると博多通りもん。
生演奏でも音響の条件によっては感じられるので、ただの付帯音ではないはず。
今となってはこれを味わうためにオーディオやってるようなものだ。これがあまり感じられないので、金属製のドライバーをもつヘッドホンは使わなくなってしまった。
KimberKable Axios AGヘッドホンケーブルを持っていたことがあるが、これに替えるとその甘みを感じられる帯域より少し上の帯域が豊かになったので、銅の周波数特性が自分の好みなのかも。銀のヘッドホンケーブル とLCD-XC(2019年モデル)の組み合わせも、あれはあれで悪くなかったが。
一方で、そういった味を出すのが得意なヘッドホンは、800Hz~1kHzにピークがあることが多い。このピークは一部のピアノの音源で脳に突き刺さる。音源でいうと分かりやすいのは羽田裕美のZARD Piano Classicsとか。
音楽教室のレッスンルームを借りてピアノを弾くことがあるが、その際にもひとつだけ突き刺さる音階がたまにある。狭い空間で反射しやすいのだろうか。
この帯域をイコライザーで抑えると楽にはなるが、響きの豊かさが失われるため、ヘッドホンの選択肢はピアノの甘みを表現できてかつ800Hz~1kHzにピークがない機種となってしまう。ZMF AtticusもAeolusも、Audeze LCD-3もだめだった。Meze Empyreanはこの2つを満たす数少ないヘッドホンのひとつだ。