Meze Audio Empyrean(3)アルカンターラパッドとレザーパッド

Empyreanは2種類のイヤーパッドが同封されており、簡単に取り外して交換できるようになっている。マグネットでくっつく機構は革新的だ。またEliteやEmpyreanⅡといった新製品が出るたびにイヤーパッドも新たなものが開発され、より多くの組み合わせが可能になった。

Empyreanの初期型に同封されているのはレザーパッドとアルカンターラパッドだ。結論から言うとアルカンターラは音を吸いすぎている。中低域が痩せて結果的に定位の見通しは改善するが、中域の旨みや低域の厚みがなくなるだけでなく、質感がボケて生々しさがなくなるような感覚がある。さらにレザーパッドで調整したシステムだと中高域の特定の帯域が持ち上がっているのか耳が疲れる。

対してレザーパッドは質感がリアルで中域は甘く、低域は厚みがあり、濃密な空気感がジャズなどでいい雰囲気を出してくれる。正直レザーに慣れるとアルカンターラは聴くに耐えないレベルだ。ただ、レザーも完璧ではなく、革が音を反射するのか、定位が割とぐちゃぐちゃという致命的な欠点がある。個々の音は立体感が感じられるのだが、全体の音の配置が見えづらい。システムのレベルを上げると多少軽減されるのと、恐らくTHA2の音数の少なさによって今はそこまで気にならないが、DACを更新したらEmpyreanが厳しくなることも考えられる。

後から出た新しいイヤーパッドはすべてアルカンターラが使用されている。よく言われる低域が中域を覆ってしまうというレザーの欠点を克服できなかったからだろうが、アルカンターラは必要な情報を吸ってるように感じるから使う気にならない。新しく出たアングルドアルカンターラパッドの評判がいいが、アングルドレザーパッドを開発して欲しいと切に願う。