Meze Audio Empyrean(1)外観と装着感

Empyreanはその見た目や音を含め、芸術性の高いヘッドホンだ。音は高めの基本性能を備えつつ、濃厚で深みのある独特な質感があり、ヘッドホンの自重をうまく分散させる考え抜かれた装着感と美しい見た目を併せ持っている。だが、実際に買って使ってみると、業界トップクラスと思われる外観の面でも惜しいと感じる点が多い。

まずヘッドホン自体の外観は確かに美しいが、イヤーパッドの厚さ故にこれを装着している姿はなかなか不格好である。ヘッドホンの外観を考えるときに、装着時のかっこよさという要素があることに改めて気づかされる。

では置いたときはどうかというと、これもまた一筋縄ではいかない。ヘッドホンに負荷を与えずかつ美しい見た目を楽しむことができる置き方が見つからないのだ。装着したときのまま置くと、左右のイヤーパッドの下部同士が接触する。

接触させたままにしておくと若干変形してしまう。これはイヤーパッドの下部が内側に向くようにバネが仕込んであるからだ。これのせいで装着時もイヤーパッドの下半分に負担が集中しやすくなっている。ヘッドバンドのスライダーを上げれば接触しなくなるが、このヘッドホンのスライダーは珍しいことに無段階調整式となっている。しかも、私が持っている個体については普通に使っていてもいつの間にかずれるくらい緩い。なので、使うたびにスライドさせてこれ以上緩くなるのは避けたい。

スライダーを調節せずイヤーパッド同士が接触しない置き方となると、ハウジングを回転させて上に向けることになるが、この場合イヤーパッドが下に向け置くことになり、使った直後にこれをやるとパッドが蒸れる恐れがある。

結果、ハウジングを下に向けて置くしかなくなり、見た目は残念なことになるのだ。しかも長時間このままだと埃も心配。

純正のヘッドホンスタンドは見た目は最高だが、スライダーを上げて収納することが前提のように見えるし、片方のイヤーパッドとヘッドホンバンドにだけ負担がかかりそうなので、導入できずにいる。