最初に購入したHD650はHD800に乗り換えた際に売ったのだが、10年余りが経った2023年、HD650が生産終了すると勘違いした私は、使用頻度の少ない中古品を入手した。2023年には、あの大きな箱はなくなり段ボールに入っているようだが、今回入手したのは箱があった頃のもの。ただ、10年ちょっと前に灰色だった箱は、黒に変わっていた。
2008年まで最高峰だったヘッドホンを今のシステムで聴いて何を思うだろうか。そう思いながらTHA2につないでみる。
比較対象がEmpyreanなのはいいとして、Bris Audio Yatono Ultimate HPでドーピングしてあるうえ、HD650はエージング不足だろうからまともな比較になっていないことはご容赦願いたい。そもそもEmpyreanの銅色バージョンにはアップグレードケーブルしか付属しておらず、純正ケーブルで比較できないし、ケーブルまで繋ぎかえるのは面倒だったんだ。
HD650を聴いてまず思うのは、これだけ聴いてたらこれでいいじゃないかと感じるほど、昔と比べて立体感のあるいい音だということ。昔の私が聞いたらこれ以上何を望むのかと思ったに違いない。
今のうちのシステムで鳴るHD650は緩い感じは全くない。音色はエージング不足もあるかもしれないが、硬い。ちょっとプラスチッキーで一辺倒な感じ。帯域バランスはいいのだが、音量を上げるとちょっとうるさい。ただ、正直定位の見通しのよさや立体感はHD650のほうが勝っている。
対するEmpyreanの強みは、低音の量感と音階の見えやすさ、音色の深み、そしてスケール感だ。特に後者2点は圧倒的で、かつ昔の自分では想像が及ばない(が故に不足と感じない)項目のため、なるほどこういう進化の仕方をするのかと思わされる。Empyrean導入時の印象としては、HD650の上位互換なイメージだったが、聴き比べてみたらやはりダイナミック型と平面駆動型であり、Empyreanは癖強めなんだと再認識させられた。立体感で劣っているのはさすがにもうちょっとがんばろうよと思う。HD650はバランスがよくて、EmpyreanやEliteはいろいろおかしいと言われるのはこういうところもあるんだろうな。音数の多いシステムで聴くともっと気になることだろう。