翻訳・監訳は日本語力、読みやすい訳文への工夫

長沢 智治
·

翻訳や監訳をさせていただく機会がそれなりにある

そこで気をつけていることを書いてみよう

以前にTwitter(現、𝕏)では何度か書き示した気もする

基本的に翻訳・監訳は英語力も重要だろうが、それよりも重要なのは日本語力だろう

かく言う私自身はコテコテの理系(応用数学科)なため、学生時代は国語が苦手科目の一つであった

しかし、社会人になり重宝しているのも、培ってきたのも国語力(日本語力)であった

もちろん、数学で培われた論理力が土台にあるからこそでもあろう

さて、翻訳・監訳の話だ

まず気をつけたいのは英語と日本語で表現方法が異なることを理解するということだ

英語では絶対的に主語が必要であるが、日本語では文脈から自明な主語は省略したほうが読みやすくなる

また、英語では重要な要素が主語に昇格し、「受け身形」の表現を用いることも多い

これらを忠実に直訳すると大変読みづらい日本語表現になってしまうのだ

記事にせよ、書籍にせよ、読んでもらってなんぼである

読みにくいと結局は著者の言いたいことが伝わらない

そしてそもそも売れなくなる(書籍の場合)

さて、いくつか私が工夫している(気をつけている)表現を挙げておこう

「I 〜」で始まる「私は、」「私が、」は訳さない。著者は読み手にとって自明なのでくどくなる。はっきりと明示しないと意図が伝わらないもの以外は省く方針だ

「It 〜」「They 〜」なども同様だ。もしくは具体的な主語に置き換えることで文章を整える

「You 〜」は、「あなた」でも「あなたたち」でもなく「皆さん」にすることが多い。読んでいる人に向けた言葉なのでこれが適訳だ

悩ましいのが受け身形だが、基本的に日本語では受け身形は用法が難しく、また長い文章ではこれらが混乱を生むと考えている。したがって能動形に変える。「〜される」は、読み手やその文脈の主体となる人物を主語にした文章に置き換えられるので、例えば「〇〇は〜できる」と言ったら表現に変えられる

また、automated testの受動態は、基本は形容詞であり、これらで名詞を形成している。よって「自動化されたテスト」といった受け身的な表現は避ける。読みにくいし名詞として長い。この場合は、「自動テスト」で十分だ。名詞なので極力「〜された」というダサい表現を避けたい

他にも気をつけている表現は多くある

件数をこなすことでこれらのパターンをスラスラと訳して構成できるようになってきた。当然だがこれらを機械的にやれば良いのではなく、あくまで内容を理解した上で適切で読みやすい文章にするのだ。これは、もちろん難しい

そしてこんなにやっていても英会話には何の役にも立たないのだ

@nagasawa
アジャイルストラテジスト/アジャイルコーチ サーバントワークス株式会社代表取締役 / スタートアップ企業アドバイザー / DASA 認定トレーナー兼アンバサダー servantworks.co.jp