夢の中のあなたがどんな顔をしていたか、もう、覚えていない。あなたはぼくに、どんな優しい顔を向けてくれていたのかな。あなたの声も、香りも、温もりも、すべて、ぼくにはもうわからないこと。だから夢の中であなたに会っても、それはもうあなたではない。ぼくの産んだ、ぼくの中のあなた。夢でしか会えないあなたさえ、もうあなたじゃないなら、ぼくは。
夢の中のあなたは、いつかぼくが夢見たあなたの通り、優しい、柔らかい微笑みをたたえて、ぼくを見つめていた。ぼくは、そんなあなたを、好きだと思った。ぼくを好きなあなたが、ぼくは好きだった。そしてきっと、そのあなたは、ちゃんとあなただった。ぼくに向ける優しい顔が、きっとちゃんとあなたであったこと。ぼくは、それだけで、生きていけるよ。ぼくがあなたの夢で会えたら、ぼくはあなたに、あなたがぼくの夢でくれた微笑みと、同じ微笑みを向けるだろう。