nagiu
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夜道をひとり歩く度、きみのことを思い出した。そして月の輝く夜はいっそう、きみを愛していることを思い出せた。夜をきみと歩いた日、きみのゆく先が月に照らされて、スポットライトみたいで、ぼくはきみを愛していた。ぼくは星になりたかった。きみが月なら、ぼくは太陽、なんて、言えないから。せめて、きみがこんな夜にひとりぼっちじゃありませんようにって願って、ぼくは星になりたかった。きみにいちばん近くの、小さなひとつの星でよかった。けれど夜はきみをのみこめない。ぼくが星じゃなくても、きみはずっと輝いている。ぼくがいちばん近くの星じゃなくても、きみの周りはずっと、瞬いていた。ぼくは星じゃない。きみも月じゃない。でもぼくの月はきみだし、ぼくの太陽はきみ。夜道でぼくを導くのも、明日へ手を引くのも、全部きみ。きみがいるからぼくは歩けるし、走れるし、愛せるんだ。きみは遠くて届かないけれど、とおくとおく離れた地球から、きみへ。