世間はひな祭りだったらしい。わたしの家は雛人形が2つほど出る家だった。8段の大きいやつとかではなく、お内裏様とお雛様の2人のやつ。ひとつは透明の箱に入っていて、オルゴールを回すとひな祭りの歌が流れるお雛様だった。今考えると姉妹2人だったからなのか?母が持ってきたやつとかなのか?わからない。母は毎年雛人形をしっかり事前に出していたが、その割に仕舞うのはめちゃくちゃ遅かった。普通にひな祭りすぎても飾ってあって、わたしが現在進行形で行き遅れているのはこのせいな可能性がある(自分の人間性なせいですよ)。
家のひな祭りはおばあちゃんがごちそうを作ってくれて、ケーキを食べる行事だった。冬、12月にクリスマスケーキ、1月、2月でわたしと妹の誕生日ケーキ、3月のひな祭りでケーキ、という、最高の期間があったが、夏になると途端にケーキは食べられなくなるのだった。昔はホールケーキを買って、お雛様とお内裏様の砂糖のやつを妹と奪い合ったものだが、いつからかそれぞれ自分の好きなケーキを選んで丸く並べるケーキになっていた。家はデザートはご飯を食べ終わってから、と言われる家だったので、ご飯を食べて、ケーキ食べていい!?と親に聞く、おねだりのようにも感じるあの一種の気恥ずかしさのようなものが鮮明に思い出される。誕生日やクリスマスのプレゼントをもらう時も同じような感覚だったのを思い出す。けれどたしかに幸せな日々。さすがにもう中学に上がった頃には祖父母から図書カードをもらうくらいのプレゼントだけだったが、幼い頃、おもちゃを買ってもらったあの幸福感、今生きていて何か幸せを感じても、あの感覚には変え難いのだろうと思うと、切なくて、愛おしい。