冬、美術展に行った。展示室を歩いていると、私の琴線に触れる作品が視界に入る。絵の前に立つ。今ここには私と作品だけ。風が吹いたり、音がしたり。絵が描かれた瞬間の雰囲気が、感情に似た何かが伝わってくる。そういう感覚を静かに楽しんでいる。展示室を出た先で静かな興奮に少し火照った体が冷たい風に触れる。良かった、と呟いた。イト