2026年6月のソウマカオンリーでソウマカ平安パロ漫画『はなあかり』を発行しました。
平安っぽい要素や設定について、本の中であまり詳しく説明することができなかったので、備忘録を兼ねてまとめます。もちろん私は専門家ではありませんし、都合よく変更している部分は多々ありますので、ゆるっとご覧いただけましたら幸いです。
ストーリーの補足やがんばったところも書いていくので、お時間のある時に、本をめくりながら読んでいただけたらなと思います。
【p1】冒頭
・死神様が発している「いとをかし」「あはれ」はそれぞれ古文単語です。「いと/をかし=とても/おもしろい」「あはれ=しみじみとした趣」という現代語訳が代表的かと思います。
・「死都(デス・シティ)」のモデルは「平安京」です。平安京の北には「大内裏(だいだいり)」と呼ばれる政治の中心地があり、その中に天皇が住む「内裏(だいり)」がありました。『はなあかり』においては、「大内裏=死武専」、「内裏=デスルームあるいは死刑台邸」と対応しているイメージです。
【p2】幼少期編~
・ウェスが演奏しているらしい「箏(そう)」は、現在の琴に近い楽器です。弦を弾くことからバイオリンを連想したため。
・「とある貴族の宴」にマカの父親・デスサイズが招かれていたために、娘のマカもついてきており、こっそり庭で遊んでいた…という設定です。
【p3】
・庭園の背景がうまく描けず苦しみました。「寝殿造(しんでんづくり) 庭園」で画像検索していただければ…イメージはそんな感じです。
・幼少期のソウルとマカが着ているのは「水干(すいかん)」という貴族男児の略装です。胸元の飾りは「菊綴(きくとじ)」と言うらしいです。マカは女の子ですが、動きやすさから好んで男児の服装をしているという設定です。
【p6】
・上から舞い降りたことが伝わるような衣服の描き方をがんばりました。
【p14】
・ブラック☆スターと椿の登場。おぼろげな知識ですが、貴族の家には、主人の身の回りのお世話や、手紙・言伝の使い走りなどをする童子が仕えているものでした。二人の設定としては、ブラック☆スターは原作と同様、死武専が引き取った子供で、アルバーン家が預かって育てている。椿は武芸で出世した中務家の娘で、アルバーン家に奉公に出されている。…と考えています。
・椿の服装は童女の通常服「衵(あこめ)姿」。ブラック☆スターの服装には特定の参考資料がありません。動きやすいよう自分でアレンジしたと思われます。
【p16】成長後編~
・前述したとおり『はなあかり』での死武専は平安時代の大内裏をモデルにしていまして、大内裏には様々な役所が設置されていました。現在の国家公務員が所属している「○○省」みたいな感じです。「雅楽寮」は催し事での楽器の演奏・舞踊などを担当する部署、「陰陽寮」は占いや暦の作成を担当した部署で、どちらも実在しました。死武専については、
「勉学に長けた者や単純に腕っぷしが強い者、あるいは特殊な術を操る者など。国籍や性別、家柄は関係なく、実力と覚悟が見込まれれば出仕することが許される」(小説版『花明りの奏』より)
という設定です。
・ソウルとオックスの服装は、「直衣(のうし)」という貴族男性の平常服です。本来は黒い烏帽子や冠をかぶるものですが、髪形が一緒になってしまうので、『はなあかり』では省略しています。以降、ソウルが着ているのはほぼこの服です。
【p18】
・キムも死武専に所属しています。日本の平安時代では、内裏(後宮)でも女性と男性は御簾で隔てられていたはずですが、『はなあかり』の死武専では男女関係なく働いていると思います。じゃないと面倒くさそうだし、身分も関係ない場所なので…ということにしましょう(後付け!)。
【p20】
・平安時代の貴族の住居様式を「寝殿造」と言って、基本的に壁がなく、几帳(きちょう)や屏風、御簾(みす)などで仕切りをしていたという、平安らしいあの建物です。室内の描写は資料を参考にしましたが、仕組みが謎、表現する画力もない部分がたくさんあったので、雰囲気でお楽しみください。(ものすごい3Dモデルを公開してくださっている方がいたけど、ipadで処理できるとは思えなかった!)
・今回、初めてパースというものを練習しました。p20の寝殿造の俯瞰をそれっぽく描けたのが一番の成果と思っています。描けてよかった…。
・ソウルの両親(和風バージョン)は創作です。母親は性転換したソウルちゃんを意識したのですが、伝わったでしょうか。あまり似てないかもですね…。
【p21】
・成人する年齢が、今よりずっと若かった平安時代。男子は元服(げんぷく)あるいは初冠(ういこうぶり)、女子は裳着(もぎ)と呼ばれる成人の儀式を経て、それぞれ装いが変わるものでした。クロナが身に着けているのは成人男子がかぶる冠ですが、本の注意書きにも載せたとおり、作者はクロナの性別について決めつけるつもりがありません。魔女たち(アラクネ・エルカ)には女性の格好をしてほしかったので、そしてこの世界ではクロナは元気だよ~というのを描きたくて、ゲスト出演してもらいました。いつかソウルたちとも出会うのではないでしょうか。
【p22】
・左下の女性の後ろ姿(実はマカ)が腰から下につけているのが「裳(も)」で、女性の正装です。本当は全体が白っぽい布なのですが、濃い色になっているのは作者のミスです。ものすごく気を付けていたはずの、着物の合わせにも何か所か間違いを発見しており、非常に悔しいところです…。
【p24】
・平安時代の女性は、家族以外の男性に姿を見せないものだったので、男女の恋愛には手紙(和歌)の贈答が欠かせませんでした。『はなあかり』には具体的な和歌は登場しませんが、手紙を贈り合う場面は何度か出てきます。初めて女性に手紙を送るとき、どんなスタンスで話しかけるか(和歌を詠みかけるか)には男性の性格が表れたそうです。ソウルはどうだったのでしょう…。
・アルバーン家からの使いとして、ブラック☆スターが再登場します。彼の服は「狩衣(かりぎぬ)」風です。狩衣はもともと狩りに着用した衣服で、肩のあたりに切れ込み?があるのが特徴です。ブラック☆スターは従者なので、画面では見えていない袴が膝丈で、従者用の格好という設定があります。まぁでも、立場や身分からではなく、やはり動きやすいから身に着けているのでしょう。
【p25】
・椿が再登場。アルバーン家のお姫様、マカのお世話をする「女房」という立場になっている設定です。夜、主人である女性に会いに来る男性を手引きするのは、主に女房の役目だったそうです。
・椿の服装について。女性の衣服は難しくて、いつどんな格好をするのか、違いは何か、どんなデザインがあるのか謎でした。ここでは一応「袿袴(うちきばかま)姿」あるいは「小袿(こうちき)姿」という公家女房の装束をモデルにしており、『はなあかり』のほとんどの場面で女性陣が身に着けているのはこのタイプです。有名な「十二単(じゅうにひとえ)」は作中で2回だけ描いたので、出てきたときに解説します。
・平安時代の配色に用いられた、有名な「かさね色目」という色の組み合わせがありますが、今回の作品では意識していません。難しすぎました…。
【p26~27】
・成長後のソウルとマカが初めて対面するシーン。御簾を挟んでいるので、お互いの顔はよく見えていません。しかし、マカは魂感知でソウルが過去に出会った少年だと気付いています。
・平安時代の女性は本名を公にしないことが多く、別の呼び名(~~の娘、役職名など)(例えば紫式部や清少納言もそうです)で呼ばれていました。魔鎌⇒マカの連想は魂レベルのあれです、運命的な感じで…ソウルはこのとき「マカ」の名前は知らないので。「ピシ」は原作2巻の表現より。
【p28】
・ソウル視点かつ、思い出の幼少期マカちゃんのコマ。時間をかけて描いた絵で、自分ではけっこう気に入っています。
【p30】
・「魂の共鳴」初体験!?の場面。ソウルの顔、一生安定しませんでした…。
【p31】
・平安時代の恋愛について、少し説明します。当時、男性は恋人である女性の家を訪れ、一夜を共にした後、夜が明ける前に帰宅するものでした。そして翌朝に「後朝(きぬぎぬ)の文」を贈って、自分の気持ちを女性に伝えました。女性もそれに返事をし、気持ちを確かめ合いました。『はなあかり』ではソウルはマカを3回訪れていますが、1日目はマカの家に泊まらず、やりとりだけで帰宅しています。それでも、作品に描いていない部分で後朝の文を贈っており(小説版では、どんな曲が聴きたいか尋ねたとしています)、その返事として、マカから桜の花が届いたのが31ページの場面です。
【p33】
・マカの髪形について。昨夜は初めて(久しぶりに)結婚相手と会うので、女性らしさを意識して髪を下ろしていたけど、今回はリラックスして会おうと決めていつもの髪形(ツインテール)にしているという設定があります。
【p34】
・初めて出会った日に吹いていた曲を、ソウルが再び演奏している場面。
【p35】
・成長後マカちゃん登場の場面。この日二人が着ている服のデザインは、幼少期の配色を意識しています。もちろん、この後のやりとりも、あの日を思い出すものになっています。
・平安時代であれば、女性が自ら御簾のうちから出ることはあり得ませんでした。「女の子が木に登る」「御簾から出てくる」というマカの行動は、どちらもソウルの常識を覆すもので、マカがソウルに新しい世界を見せる存在であることを示したいと思って、それぞれ描き方にもこだわりました。
【p39】
・ダンスっぽい感じを意識しました。この作品の作業中、だいたいピアノ曲のBGMか穏やか系の歌枠を聞いていたのですが、このページの下コマだけは、アニメイーターのサントラを聴いてしまいました!繋いだ魂の灯~~~!そして次ページで少女漫画に戻る。
【p40~41】
・初の見開きページ。思いきり少女漫画な場面なんですけど、少年漫画ならどう表現するかな、というのも意識して構図を考えました。ノド側の絵が思ったより隠れてしまったので難しいな~と思いました。
・ここで、全体の制作裏話をします。2回目の逢瀬までの、キャラクター部分のトーン&影入れは友人が作業を手伝ってくれました!(イベントで売り子をしてくれた方です)本人がたいへん謙虚で、あまり言ってほしくないとのことなので、こっそりここでお知らせしておきます…。全ページ素晴らしいのですけど、この見開きページの影の入れ方なんて特に、めちゃくちゃ芸術的ですよね…!すごい。本当に、心から感謝です。いつか彼女に小説の表紙を描いてもらうのが、私のささやかな野望です。
【p43】
・翌朝の場面。前述したようにソウルは夜明け前に帰宅していますが、今回はマカの枕元に笛を置いていきました。ソウルの笛を取り上げるマカと、自宅で朝を迎えたソウルが、それぞれ昨夜の逢瀬を思い返しています。ソウルはブラック☆スターに後朝の文を渡します。女性側の使者に一通目を託す場合があったのかは…深く考えまい…。
【p44】
・平安時代は、男性が女性のもとに3日間通うことで正式な結婚と認められました。3日目の夜、新婚の二人でお餅を食べる「三日夜の餅(みかよのもち)」という儀式があったそうです。
・このページでマカが着ているのが「十二単」です。唐衣(からぎぬ)を羽織り、裳を垂らしているのがわかりやすい特徴です。女性の晴の装束(礼服)で、重さが10kgほどはあったと言われています。重い。ソウルが被っているのが立烏帽子です。結婚式の日ということで、二人とも正装で描きました。
・二人の着物の模様はクリスタのASSETSで配布されているものから、持っている平安漫画を参考に、これっぽいな~と感覚で選びました。マカが着ている模様は「臥蝶丸紋(ふせちょうのまるもん)」、ソウルのは「雲立湧(くもたてわく)」という名前がついているそうです。ちなみに私は青海波が好きです。
・厳密には、三日夜の餅の儀式と、正装を着るタイミング(おそらく、「露顕(ところあらわし)」という女性の親と挨拶をする披露宴の儀式)はずれていたかもしれず、そこまでは調べられていません。だんだん出てくるざっくり設定ですが、あくまでソウマカ漫画なのでご容赦ください…。
【p45】
・三日目の夜~翌朝の場面。小説版では詳しく書いているのですが、この間に二人はこれまでにあった出来事などを語り合っています。二人がここまで再会できなかった(デス・シティでマカの噂さえ聞かなかった)背景として、マカの父親のデスサイズが女性関係でやらかし、地方へ左遷されてマカも同行していたから…という設定があります。
【p46】
・「浮気しないで」のセリフは絶対マカに言ってほしかったのですが、平安時代的には男性は複数の恋人をもつのが当たり前だったので、マカ自身もそれをわかって「変なお願い」と断りを入れています。文学作品などを読むと、そんな時代であっても、浮気される女性たちの苦悩は現代と変わらなかったことがわかります(そりゃそう!)。マカは両親の姿を見て、一般常識ではなく自分の意思をもち、ソウルに伝えました。ソウルはどんな世界でも、マカの思いをしっかり受け止めてくれる男の子だと思います。
【p47】
・…という一連のやりとりは、原作1話をイメージしています。ふんわり笑顔のマカちゃんも。二人はここから始まった…とにかく1話が大好きすぎます。
【p48】
・その後に起こった色々なこと。各コマから読み取っていただける通りです…。この世界でも武器化はあるという設定です。
・パパのせいでデス・シティを離れていたマカ、ブラック☆スター、椿の三人も、このあと死武専に加わります。彼らは幼少期から死武専と縁があったはずなので、復学なのかもしれません。ソウルとは時期が被っていないということで。
【p49】
・ソウマカには、やっぱりブレアがいないと!という思いが最後まであり、ようやく登場させることができました。
・マカが着ているのは幼少期と同じ水干です。結婚した女性が子供用の服を着るわけはないのですが、デザインが原作の初期服とちょっと似ている(菊綴=ボタンみたい!)という理由で採用しております。このイラストは色付きで見たいな~と思ったので、ノベルティのポストカードにしました。
【表紙など】
・本文を描き終えて、ほっとして雰囲気で描いてしまったためか。改めて見ると表紙のマカの装束が何とも中途半端でむむむ…となります。和風ってことがわかればなんとか…。
・表紙を描くときに聞いていた曲は『春よ、来い』(松任谷由美)と『うつくしい世界』(Aimer)です。『春よ、来い』は親の影響で小さい頃からよく聞いていたのですが、改めて歌詞を読むと、今回のストーリーそのままでは…と自分でも驚きました(影響されている)。ソウルにとってのマカ。マカにとってのソウル。それぞれ自分では気づかずにいた、あるいは目を背けてきた「本当にほしいもの」を、互いに差し出し、支えあうことができる。相手を思うことが自分の強さになる…今回はifのような、パラレル世界の二人でしたが、どんな世界でも変わらないソウマカの関係性を表現できていたらいいなと思います。
・表紙のデザインについて。これまた、友人が色遣いや文字配置などのアドバイスをしてくれました。初期案はもっと国語便覧っぽい感じでした…。重ね重ね、感謝しかございません。
・おまけ漫画。せっかくだから原作軸の二人もちょっと描きたくなりました。
…以上です。たいへん長くなりましたが、最後までご覧いただきありがとうございます。今後、思い出したことなどがあれば書き足していくかもしれません。
【参考文献(一部)】
・「新国語総合ガイド 三訂版」(京都書房)
…平安時代の文化について、主にこの本を根拠にしました。学生時代のものですが、間違いなく永久保存版です。
・「源氏物語 千年の謎」漫画(角川書店)
…同名映画のコミック化。衣服や調度など描き方の参考にさせていただきました。ストーリーに関しては、個人的にはあまりおすすめではないです。
・その他、古典文学を題材にした本。インターネットのもろもろの記事。
※平安時代の知識について、「おかしいのでは?」「ここが疑問、知りたい」と思われる点があればこっそり教えてください。(このサイトでは匿名で感想レターを送っていただけます。匿名箱などでも大丈夫です。)
※日本の古典文学を題材にした作品(小説、漫画、アニメ、学術系など何でも!)おすすめがあったらぜひ教えてください!とても喜びます。
最後と言いつつ…最後の最後に、創作について少し。
普段は原作軸ソウマカの、小説をメインに同人活動をしています。今回平安パラレルを舞台にしたのは、平安好きだからというのは勿論のこと、「二人が初期からお付き合いしているという夢」を形にしてみたかったからです。ツインテールのマカちゃんと、ソウルにくっついてほしい。あのキスシーンを描くことができて、このお話を作ってよかったな…と思いました。漫画にしたのは、自分が好きな平安時代の文化や風景を視覚的に表現したい、共有したい、という気持ちが大きかったからです。ソウマカ+平安時代という推しの両輪があって(そして友人の助けがあって)慣れない作業をなんとかひと段落させることができました。漫画を描くの、めっっちゃたいへんでした!去年の9月から模写練習をして、朝活や通勤時間を利用してクリスタの勉強やネームをしました。イラストを練習するいい機会でしたし、文章からいったん離れて気分転換にもなりました。これからも自分のペースで創作を続けていきたいと思います。
またどこかでお会いできる機会があったら嬉しいです。本当に長くなりましたが、ここまでご覧いただきありがとうございました!