最近の若者が接することのできる語彙はIMEによって制限されていると主張しているが誰も聞いてくれない ワープロ以降の書物はすべてIMEに搭載された辞書によってバイアスがかかっているんだよね
これはあるのではないか。そう私は感じた。授業中もこれを考えてしまうことがあったので、考えたことについて書き残す。
IMEは入力の何に影響するのか?
IMEは、入力の何に影響するのだろうか。日本語IMEの代表的な役割は、「変換」だ。「Aitasyugi」「あいたしゅぎ」を「愛他主義」に変換すると言った形だ。
変換をするIMEは、ただ単にキーボード入力を漢字に変換するだけである。そのため、同音異義語での語彙力は増加するものの、新しい語彙を得ることは、変換では難しい。「愛他主義」と入力したいユーザーは、その単語を知っているから入力しているためだ。
IMEで「あいたしゅぎ」と入力しても変換できなかった場合ユーザーは、「あい」「ほか」「しゅぎ」と入力したり、ユーザー辞書に追加したりするだろう。変換において語彙力は増加しない。
なので、IMEは語彙力を変化させないと考える。しかし、この考えはIMEのもう一つの役割を無視している。「予測」だ。
IMEの予測変換
IMEは、予測という機能を持っている。「あ」と入力した時に、「ある」「圧力」「アイデア」などが出るようにだ。また、「日本」と入力した時に、「語」「人」「は」などと次の単語を候補に出す機能をもつ。
この機能が語彙力を制限しているのではないか。
「本当に期待の通りに行かなくてネガティブだ」と伝えたい時に、「誠に」とまず入力したとする。予測候補に、「残念」などが出る。ユーザーはそれを参考に「誠に残念である。」と入力する。
ユーザーが「残念」を知らなかったら、新たな語彙が獲得できたわけだ。
予測候補に、「遺憾」も出ていて、ユーザーは「誠に遺憾である」と入力したなら、語彙が増えるわけだ。
IMEの予測機能は語彙力を狭めている。
ん?変換機能でも語彙力を狭めないか?
変換機能では語彙力が制限されないと書いたが、その可能性もある。
あるユーザーAとユーザーBがチャットしているとする。ユーザーAが「愛他主義」と入力しようと「あいたしゅぎ」と入力する。しかし変換が出ない。ここでユーザーAは単語「愛他主義」の使用を諦める。
変換に出ないから諦めてしまうことで、ユーザーBは新たな単語の習得機会を失った。IMEが語彙力を制限する影響は、このようなところにもあるのではないか。
自然言語AIも語彙力を制限する?
自然言語AIも語彙力を制限するのではないか。
今後、人に聞くだけでなく、AIに話したり聞いたりすることが増えていくと考える。すると、普段人から得ている語彙の量が少なくなり、AIから得る語彙のシェアが大きくなるだろう。
自然言語AIなどのたいていのAIモデルは、大企業が作っている。その数は少数だ。モデルの数が少数で大規模なものなので、皆が同じようなモデルを使うようになる。
AIから得る語彙の量には、限界があると考える。たくさんの人間が使っている一般的な語彙のみを使うようになり、個性があったりあまり使われない語彙は使われなくなる。
100人の人間分の個性を、1つのAIモデルが補うようになる。得られる語彙は当然減る。
そうなってしまうと、また人の語彙力は機械によって奪われてしまうのだ。