木漏れ日を集める人

なかやま
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公開:2023/12/27

多くの選択肢の中からひとつ選ぶ、あるいは多くの選択肢があるのにいつも同じものを選ぶ。自由や豊かさというのは「選択できること」だと思っていて、しかし選択したものを維持しつづけるのは難しいし、厳しい。映画「PERFECT DAYS」の平山の生活はまさにそれだと思う。彼はトイレ清掃の仕事の休憩時間にフィルムカメラで木漏れ日の写真を撮り、現像して満足できなければ即、破ってしまう。いっさい迷いがなくて驚いた。彼なりに出来に満足できたのであろう残した写真も箱に放りこむだけ。「大切なもの」への態度は人それぞれ。

判で押したような繰り返しの生活が美しいように描かれているけど、変化のある瞬間もいい。いかにもいまどきの若者である姪が自分と同じフィルムカメラを持っているのを見て、あまり感情を表に出さない彼がうれしそうな表情を浮かべる。誰ともわからないトイレの利用者との〇✕ゲーム(少しずつ進んでいく)。何年も会うことのなかった妹との再会...

平山は毎日寝る前に文庫本を読み、読み終えると休日にいつもの古書店の100円の棚から熱心に選んで1冊買う。これも(金額をふくめて)繰り返し。棚から選んだら、もう読みながらお金を出すのがおもしろい。店主はそのたび本の著者についてちょっとしたコメントを口にする。これは変化。この店主も、平日と休日にそれぞれ通っている飲み屋の店主も、彼に対してさりげなく好意的なのが、見ていてうれしい。そういう人たちが守っている店に通う生活を選んでいる。

@nakayama
好きなことは本を買うこと(追いつかないけれど、読むことも)。ネコを見ること。