病院の待ち時間は、たいてい1時間ほど、他にすることもなく読書に集中できる。今日は文庫本の『橙書店にて』を持参した。単行本未収録分から読む。
本の最初に戻ると、「路地裏で」と題された、橙書店を開店した経緯やその場所の話。最初の店はたしかに路地裏という言葉がぴったりな場所にあった。地震のあとの新しい店も好きだけれど、私はもう無い、この路地裏の店をいまでもよく覚えているし、できるだけ長く覚えていたいと思っている。昔の店を知っている人が増えることはないから。
これは路地裏の店を最後に訪れたとき(2016年8月)の1枚。撮っておいてよかったと思う。
「緑の椅子」にも路地裏の店のことが書かれている。この緑の椅子のオットマンの上で、店主の田尻さんのネコ、白玉ちゃんが休んでいる姿を写真に撮らせていただいたことがある。初めてお店に行ったときだったかもしれない。ちょっと緊張したが、快くどうぞと言っていただいて安心した覚えがある。
読んでいる間じゅう、こんなふうにいろいろ思い出してしまい、あまり読み進むことはできなかった。急いで読むような本ではないから、いったんここで止めて、心が大きく動かされるような読書の後にでもまた続きを読むつもり。