誕生日までふた月を切った。そろそろ身構えなければならない。
何のことかというと、誕生日プレゼントに対して、である。
配偶者は毎年私になかなか立派な誕生日プレゼントをくれる。なかなか立派なのだが、「何故それを私に」というものが多いし、ときどき「ちょっと早いけど」と誕生日よりも二、三ヶ月ほど早くに渡してくる。全く油断ならない。
交際期間も含め、私が希望して彼にいただいたものは二つくらいしかない。
付き合うようになって初めて迎えた誕生日を少し過ぎたデート中、「何か買ったる、ほしいものないん?」と訊かれて浅草で買ってもらった三千円(税抜)の犬張子。
六年前に、「ほしいなぁと思うんですけど」と言ったら「これか」とその場で即ポチされた一太郎2018プレミアム。
このくらいしかねだったことはない。いや、一太郎については、購入についての相談を持ちかけようとしたら即座に購入されたのでねだってすらいないから、実際は三千円の犬張子しか望んだことはない。
それ以外?
「これは今年の誕生日分、こっちはクリスマスプレゼント」と家庭用プラネタリウムと携帯ゲーム機とゲームソフトを。
「今年は思いつかんかった、これで好きなものを買いなさい」と現金を。
「本いっぱい買うやろ?」と図書カードを。
「ずっとPCでCD聴いてるし」とコンポを。
「何か興味ありそうだったから」と水耕栽培機を。
「美しくおなり」と美顔器や光脱毛器を。
「ずっと昔買ったニトリの安いの使ってるから」と結構なお値段でカッコイイ包丁を。
「それ何年使ってるんやボロボロで見てらんねーんだよ!」とノートPCを。
ほしいものがないといえば嘘になるし、もらえば嬉しくないわけではないが、私は彼に対して特に何を望んでいるわけでもない。ゲーム機や水耕栽培機や美容器具なんてそれまで興味を示した素振りなど見せたことがなかったから「なゆにえ」となったし、コンポや包丁も手元にあるもので何とかなるから必要と感じたことはない。ノートPCも、キーボードの文字が消えてしまったのでシールを貼ったりしていたがまだまだ使えると思っていた。そこへ『まあまあ高価なもの』をポンと渡してくるので、「お、おう」とちょっとびっくりした後、「ヌッヒッヒ」となんだか少し笑ってしまうのだ。
数年前、彼は「そろそろネタ切れだわ」と言った。私は内心(ネタだったのか……)と思いつつ、「いやネタとかそういうのいいですから」と返した。
それでも実は――「今年このひとは一体何を私にくれるんだろう」と毎年少し楽しみにしてしまっている自分がいる。「何故これを私に」というものも、きっと彼の私に対する愛的な感じのそういうやつの形なのだ。多分そう。でも正直、毎年毎年そんなに高価なものをくれなくてもいいのになとも思う。私は「スーパーで二週間に一度買っていいホタテのお刺身代」とかで全然いいのだけれど。
などいうのは、きっとハードルを上げてしまうだろうから、とりあえず彼にはバレないようにしておかなければ。ヒミツヒミツ。