自分でもわかりやすい場所に、一本だけ長い髪がある。
他の髪と比較した長さからみて、おそらく前回美容院に行った際の「切り忘れ」だ。たった一本だけ、8cmくらい長い。
気になって仕方がない。それだけが異様に長い。所詮髪の一本、さしたる障害があるわけでもないし、それどころではないときは全く気にならないのだが、気にし始めるとしばらく気になってしまう。
切ってしまおうか?
でも髪を切るだなんて、たとえたった一本だけとはいえ、ど素人が手を出していいものだとは思えない。昔自分で前髪を切ろうとして失敗し、しかも懲りずに何度も繰り返してきたから、自分で髪を切るということがどんなに惨たらしい結果をもたらすか、私は知っている。この一本を切ってしまったがゆえに、とんでもなくバランスが悪くなったらどうしよう。
では、抜くか?
それもよくない気がする。なんだかよくわからないけれど、抜くのはよくない気がする。気がするだけではあるが。
私は共存の道を選んだ。
次に美容院に行くのは、年末近くか、年が明けてからになるかもしれない。
それまでは共に生きよう。
もしかしたら、私とその一本との間に、愛とかなんかそういったようなものが目覚めるかもしれない。
まぁ、次に美容院行ったら切るんですけども。