冬の甘露

半井ユキヤ
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公開:2023/12/11

 初夏に、南高梅のシロップを作った。消毒した瓶に、梅の実、氷砂糖、梅の実、氷砂糖、と順に詰めて、氷砂糖が少し溶けてきたら瓶を振って少し混ぜるのを毎日繰り返すと、二週間くらいでできあがる。炭酸水や水、で割るのもいいが、牛乳で割っても意外とイケる。糖度が高く冷蔵庫で保管すれば冬だって楽しめる。お湯で割ったものはあたたまる。

 そんなふうに作った夏の名残のお湯割りをちびちびと楽しんでいたある日、金柑を同じように漬けてシロップを作っている方の写真を見た。そのとき、私は気付いた――そう、梅以外にもおいしいシロップを作れる果物はたくさんあるじゃないか。梅以外を、夏以外に漬けたっていいのだ、と。

 ちょうどこの時期、住んでいるところではマイヤーレモンなる柑橘類が出回り始める。レモンとオレンジの交雑種といわれ、レモンより酸味が少なくオレンジより酸味が強い、製菓やドレッシングによく使われる皮が薄くて果汁たっぷりのおいしい果物だ。私もゼリーを作って食べたことがある。マイヤーレモンは、おいしい。先日地方局のニュースで収穫が始まったと言っていたから、そろそろ店頭に出回るだろう。

 そう思っていた矢先、店頭で見つけた。

 ので、買った。

 氷砂糖は、調味料売り場に売っていたのは1kgと多すぎたので、お菓子売り場の飴コーナーで探した。

 夏に作った梅シロップは実を取り出し注ぎやすい別のプラボトルに移してあったため、漬ける用の瓶は空いている。とはいえ大きくて煮沸消毒するのは大変なので、アルコールスプレーを吹きかけて消毒しておく。これで準備万端。

 輪切りにしたマイヤーレモンと氷砂糖を、重ねて入れていく。

 本当は果実と氷砂糖は同量が望ましいのだが、量ってみたら氷砂糖が少し足りなかった。まあいい。なんとかなる。私は雑に生きる女。(あまりよくはない)

 今日の日付の札をつけて、涼しいところに置いておく。これで二週間ぐらいすればおいしいマイヤーレモンのシロップができているはずである。信じる。頑張れマイヤーレモン&氷砂糖。きみたちはいいコンビだ、きっと最強のバディになれる。褒めておくから伸びてくれ。おいしい方向に。

 畑で何か育てたり、柿を干したり、漬けシロップを作ったり。一見『丁寧な暮らし』というやつをしているみたいに見えるが、このくらいなら雑な私でも「できなくはない」だけの話だ。

 みんな雑にシロップを作ればいいと思う。おいしいから。

@nakyukya
まったくここはしずかなインターネッツでつね