どっちのいちごショー

半井ユキヤ
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 配偶者はシャトレーゼでアイスを買い溜めする男である。食品の買い物は基本的に私の役割なのだが、放っておくと私はアイスなど滅多に買わないし、スーパーで売っている箱入りのアイスは小さいからだ。

 買い溜めするのは、二~四週間に一度。私も二種類ほど選ばせてもらい、大体五種類くらいのアイスを冷凍室の上段の引き出しに敷き詰める。あまり大きな冷蔵庫ではないので、冷凍室の引き出しはアイス専用だ。下段には弁当用の食材が少しと、インターネットでまとめ買いした業務用サイズのバター、ときどき冷凍うどん、あとは停電対策で保冷剤がたくさん。ろくに入らない。我が家の冷蔵庫の冷凍室は、ほぼアイスのためにあると言っても過言ではない。もう少し有意義に使いたいと個人的には思うのだが、日々なかなか過酷な労働で疲れ果てて帰宅する彼の食後の楽しみを考えれば、それもまた道であるのだろう。

 で、今日もまたシャトレーゼに行った。でっかい保冷バッグを持って、店内をうろうろ。今回は残りがまだ少しあったので、二種類ずつ選んだ。

 アイスを買うときは、“本日のおやつ”も一緒に買う。配偶者は春先から出回るようになるハーフカットされたいちごがクリームのど真ん中に埋められたロールケーキが好きで、この時期はそれをよく選ぶ。他のシーズンでいちご以外の具(?)の入ったロールケーキを買うこともあるが、「うまいけどやっぱいちごが一番ええな」と気持ちを回帰させている。いちごが好きなのだ。ハーゲンダッツもいつもストロベリー。いちご大好きおじさんである。

 それだから、いちご大好きおじさんは、今回もいちごのロールケーキを選ぶのだろう、と思っていたのだが――彼はふと足を止め、少し腰を屈め、ある棚を覗き込んだ。

 いちご大福。

 粒あんの白いお餅のものと、ミルク餡のピンクのお餅のもの。じっくり、見ている。

「気になるんですか」

 いつもおやつは生洋菓子なので、珍しいと思った。しかし彼は、うぅん、と少し唸ると、生洋菓子の冷蔵棚の方へ向かい、カゴの中にいちごのロールケーキを入れた。

 そうしてレジへと向かおうとして――また足を止めた。

 見ている。いちご大福を。

「そんなに?」

「うーん……」

 少し、悩んで。

 彼は、意を決し、ピンクの方のいちご大福をカゴに入れた。

 そう、彼はいちご大好きおじさん。いちごのロールケーキが好きだが、いちご大福も好きなのである。彼の勤務地の町の和菓子屋さんでおいしいとちょっと名が知られているいちご大福も好物らしく、何度か買ってきてくれたことがある。何せいちごが好きなのだ。

 「いらん?」と言うので、私の分も買っていただくことにした。別々に買うよりもちょっぴりお得になるのに気付き、彼が入れたピンクのいちご大福が入ったパックを棚に戻し、『食べ比べセット』として紅白ひとつずつ入った二個入りのパックをカゴに入れ直した。

 彼は二種類のいちごのお菓子をどちらも手に入れた。これが大人のやり方である。子どもには到底真似できまい。

 お会計を終え、保冷バッグに買ったものを詰めているときの彼の顔は、とても満足そうだった。

@nakyukya
まったくここはしずかなインターネッツでつね