実は家の中にも植物がある。
ポトスという観葉植物。観賞するために買ったのではない。実用品として迎えたものだ。
昨年、思い立って水槽で鉄魚なる魚を飼い始めた。水槽を置いてある玄関ホールは少し薄暗いので照明を点けるのだが、明かりをともしているとどうしても水槽内にコケが生えてくる。ときどき手を突っ込んでスポンジで擦っているものの、やはりなかなかに面倒だ。
コケ防止の薬剤を入れても焼け石に水、どうにかしてコケの侵攻を遅らせたい。祈るような気持ちで検索して調べてみると、どうやらポトスという観葉植物を上部フィルターや水槽の縁に直接引っかけておくとコケ抑制になるとのことだった。水中の養分を吸って成長する=コケが生える分の養分が少なくなるという仕組みらしい。なるほど、そういえばそれなりの量の水草を入れているとあまりコケは生えないな――緑を制するものは緑ということか。さっそく最寄りのホームセンターへと向かった。
上部フィルターには更に二つの濾過槽が設置してあるため、水槽の縁にかけておく方がよさそうだ。どんどん育つというし、最初のうちはあまり邪魔にならないように小さめのやつにしようとそれらしいものを探すと、細かい炭のチップを土代わりにしてプラカップに植えられたポトスを見つけた。それでも求めていたものよりもまだ少し大きいのだが、それ以上に小さなものは見当たらないし、まぁ何とかなるだろう。次に近くの100均の店に行き、台所の水切りカゴに引っかけて使う小物用の水切りと、金属製のフックとマグネットクリップを購入。帰宅して、それらを上手い具合に組み立てて水栽培用のポットを製作し、買ってきたポトスの株と炭のチップをそれぞれ半量に分けて入れ、水槽の端に引っかけた。これでバッチリ…………な、はずだ。
しかし、ポトスは意外にも働いてくれなかった。
数ヶ月様子を見ていても、全く大きくもならないし、水槽は相変わらずコケが生える。水中の養分を吸ってぐんぐん育つのではなかったか。期待はずれだった。
このまま水槽に引っかけておいても意味がないので、ポトスを撤去することにした。
水槽から引き揚げたポトスは炭チップと共に元のプラカップに一旦戻すと、少しだけ育った。何だお前、水の中でも生きられるけどやる気がなかったのか。ほんのちょっとだけ腹が立った。プラカップでは不安定で心許ないので、100均で樹脂製のキャニスターを買ってきて植え替え、台所のシンクの近くに置いた。
それから半年と少し経ったが、うちのポトスは相変わらずやる気がない。根が腐らない程度に、枯れないようにときどき水をやっているが、ほんの少ぅし大きくなった程度で、噂に聞くような生命力を発揮することなく卓上電波時計の隣に鎮座している。
思っていたようには働いてくれなかったし、成長を見せつけてくれるでもないこのポトスとかいう植物に対し、正直私は愛着も何も持ってはいないのだが、うちに来たからには枯れるまで面倒は見ようと思う。