昨年秋、ミディトマトと米なすとオクラが終わった畑に「お試し」で白菜を一株だけ植えてみた。うまくできれば来冬も三株くらいやってみようと思ったからである。上手くできなかったら「白菜は無理だ」と諦めて、スーパーで買えばよい。
そう、簡単なことだと思っていた。
白菜はすくすく育った。「そんなに?」と思うほどに葉を広げ、ちょっとした魔法陣なんじゃないかと思うくらいにでかくなった。これは期待できそうだ。
そう、わくわくしていた。
ところが白菜は、育つだけ育ってなかなか玉にならない。確かに葉は白菜らしい、のだが――
いつ玉になるんだろう?
そう思っているうちに、花が咲き始めてしまった。
どうやら白菜は失敗したらしい。調べた通りに追肥したりしたのだが、栄養過多でも玉にならないのだという。ちょっと雑すぎたか。雑な乾燥粉末肥料が強すぎたのか。
多分、葉をむしれば食べられるのだと思う。しかし如何せんでかいし、農作業用に買ったハサミが立ち向かえるかどうかというほどにがっしりしている。マッチョだ。マッチョ白菜だ。多分斧とかじゃないと倒せない。鉈か鍬か、もうひとつ畑で使う何かしらの強そうなやつを導入する必要がありそうだ。強そうなやつって何だ。私は一体何と戦おうとしているんだ。白菜か。己の生み出したモンスターと対峙しなければならないのか。
まさか自分で植えた白菜と一戦交えることになろうとは。
戻れるものならあの秋に戻りたい。
そして自分に伝えたい。
「白菜植えるのやめとき」、と。