通勤の最中、働く犬を見かける。その犬は目の見えない方をサポートするお仕事をしていて、つるんとしたラブラドールレトリーバーで、いつ見ても毛艶が良くて、時期に合わせたウェアをお召しになっている。私より季節感がある。
訓練されている賢い犬さんは、エスカレーターに乗るときに人間より慎重で、とてもえらい。犬を見たいので(あと、単純に歩きやすいように協力できていればいいなあと思って)よく道を譲る。後ろの人になんだ?と怪訝な顔をされることもあるが、前に居るのが盲導犬だとわかると大体の人はなるほどと引っ込む。都会のエスカレータ―は前に詰めるものなので、前を開けていると何事かと思われるのである。朝だからね。しょうがないね。
前の人が居なくなる、真っすぐの板が来る、犬さんは前を見てトトッと登る。おー、と思う。降りるときも同じである。歩いている板が真っすぐになると、またトトッと降りる。そのあとは点字ブロックに沿って歩いて行って、ホームドアの横でぴたっと止まる。止まると、犬さんのパートナーは頭をよしよししてあげている。犬さんはちょっとだけ尻尾を振る。つるつるすべすべの頭。
働いている犬さんは、散歩中の犬に比べて尻尾をぶんぶんしていない。仕事中だからなのだけど、犬さん褒められるとうれしいんだなあ…と思って、いいなあと思って通り過ぎる。働いてえらいなー、と思いながら出勤するのは、ちょっといい。