年賀状をデザインしてみた

ナミキ
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ちょうど年末だったので、デザインの練習として年賀状のデザインを作ってみることにした。完成までに何を考えてどんなことをやったかを記録する。

情報収集① 年賀状の特徴を調べる

ますは情報収集として、年賀状を取り扱っている通販サイトで年賀状のデザインを観察して、よくある年賀状の特徴とは何か書き出してみた。

  • 構成要素

    • 背景は 白地 or 塗りつぶし の2択

    • イラストが主役のものが多い

    • たまに箔押し加工のゴージャスなものもある

  • 配色

    • 赤、金、白といったおめでたさを連想させる色が多い

    • 辰年を象徴する龍のイラストによく緑色が使われる

    • 色数が多く、彩度や明度の高い配色が多い

    • 暖色中心の配色が多く、寒色はあまり見かけない

  • どんな情報を載せるか

    • 年(2024)

    • 「HAPPY NEW YEAR」や「謹賀新年」など新年を祝う言葉

    • 「今年もよろしくお願いします」などの挨拶

    • 自分の名前

  • レイアウト

    • イラストを主役とし、イラストの枠外に文字を添える

    • イラストに文字を組み込む

    • 小さな要素を並べる

  • 正月らしいモチーフ

    • 椿、餅、竹、松、太陽、など……

あとから思ったが、「正月らしい紋様(市松模様など)」も観察してみるとよかったかもしれない。

方針を決める

年賀状を観察してみた結果、イラストが主体のものが多かった。しかしこれはデザインの練習であってイラストの練習ではないので、イラスト頼みのレイアウトにすることは避けたい。

イラストに頼らないレイアウトを作るとなると、また別の軸での情報収集が必要となるだろう。そこで、いろいろな2択を用意してどんな雰囲気にしたいか考えてみることにした。

  • にぎやか/シンプル? →シンプル

  • ポップ/シック? →ポップ

  • かわいい/かっこいい? →かわいい

  • 干支の龍を入れる/入れない? →入れる

  • 暖かい/寒い? →暖かい

  • ふわふわ/くっきり? →くっきり

グリーティングカードなので、見た人に暖かい感情を想起させるような年賀状が良いと考えた。

本来は龍の姿をしっかりと入れたかったが、さっと描いてみて納得のできる龍が描けなかったので、入れるとしてもシルエット程度に留めることにした。

龍が描けない。

一度ラフスケッチを描いてみる

上で打ち出した方針をもとに、この時点でいくつかのラフスケッチを描いてみた。

結局、イラスト頼みのレイアウトは避けたいと言いつつ、先に見た年賀状のレイアウトに引っ張られてイラスト中心のレイアウトがほとんどになってしまった。よって、イラスト要素の少ない1段目右端か2段目左端を候補として考えた。

ここでどうしても手詰まり感を覚え、デザイナーの身内にレビューを仰いだ。

曰く、2択で方針を打ち出したことは良く、それに従って合理的に判断を下していけば良いとのことだった。本来なら顧客がいて顧客の希望に沿って作っていくところだが、今回は顧客はいない。強いて言うなら自分が顧客なので、自分が欲しいデザインはどんなものか考えてみるといいとのこと。

また、情報収集の仕方についても「年賀状にとらわれず、もっといろんなものを見た方がいい。年賀状だけを見ると年賀状しかできない」とのアドバイスをもらった。

このレイアウトを採用する方針で、さらなる情報収集をすることにした。

情報収集② 年賀状以外のアートワークを見る

Pinterestでポスターデザインを中心として探す方針に切り替えた。結果的にこの探し方はとてもよかった。文字を主役としたレイアウトや、イラストに頼らないレイアウトがいくつも見つかった。

「2024年賀状」というシークレットボードを作り、そこにどんどんピンを入れていった。すると、似たような画像がおすすめで出てくるため、集めれば集めるほど理想の画像が出てくるようになった。

再びラフスケッチを描いてみる

最初に作ったラフスケッチと集めた資料を元にして、もっと解像度の高いラフスケッチを描いてみることにした。

……わからん。どうしていいか全くわからない。うねうねした曲線と明るい色使いという要素は統一されているものの、他の要素をどうしていいか決めきれずに迷走していた。

ここでもう一度デザイナーの身内に助けを求めると、「設計のための情報が足りていないのでは?」という指摘をもらった。最初に「ポップでかわいい」などの方針を打ち出したが、どうやらそれだけでは不足していそうだった。自分の考える正月らしさや表現したいことは何なのか考えてみては、とのことだった。

ここで、改めて何を表現したいか整理してみることにした。

グラデーションによる夜明けの空を表現したい。それは単純に色の美しさを表現するのはもちろん、初日の出をイメージすることで心機一転新しい年を始めようという意味を込めたい。

……そこまで決まれば、ラフはすぐに完成した。美しい夜明けの写真を1つ選んでカラーパレットを作成し、グラデーションの中に浮かぶ文字を書いた。右肩上がりにすることで縁起の良さを示し、文字を読む順番でだんだん夜が開けていくことを表現している。龍は最も遠くにシルエットだけを描くことで、幻の生物らしい神秘性を表現した。

いざ、デザイン作成

ここまで決まればほぼ完成じゃないかと思ったが、作る工程で再び迷走することになる。

うねうねしたグラデーションを描き、文字を乗せるところまではよかった。ラフの時点で文字が縦長だったので、縦長のフォントを示す「cond(コンデンス書体)」でフォントを検索し、雰囲気に合いそうなものを選んだ。

問題はここからである。

これだけだと全く装飾がなくて寂しすぎる。ここから雰囲気を崩さずに装飾を加えるにはどうしたらよいか。

グラデーションで塗りつぶしてみたり、文字の向きをあちらこちらに傾けてみたり、いろいろやってみた。その中でも影をつけたものは、紙のグリーティングカードのような雰囲気が出てよかった。

では、本当に紙のグリーティングカードらしく、キラキラさせてみてはどうだろうか。

……加工の仕方の問題なのかもしれないが、ずいぶんと色合いが変わってしまった。なんかダサい。

そして、ラフの時点で存在していた龍だが、重なりに影があって紙っぽいのにここだけデジタル調で違和感があった。どう置こうか悩んだ結果、なくしてしまった。

最終的に、もうこれ以上悩んでもよくならないと見切りをつけ、これで完成とした。

反省

正月らしいモチーフが何もない、シンプルすぎる仕上がりになってしまった。他の人のいろいろな作品を見ていると、もう少し華やかにしたかったなと思う。それぞれの色の段に正月らしい模様のテクスチャを貼るなども試してみたかった。

また、紙のグリーティングカードをモデルとするなら最初からそのように決めておきたかった。であれば紙のグリーティングカードの参考資料も集めて、紙のグリーティングカードらしい作り込みができたかもしれない。

ひたすら最初から最後まで方針に迷っていた。これって、グラフィックデザインを学んだら迷わずにできるようになるのかな……?

@namiki
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