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浪崎らくだ
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公開:2023/11/17

祖父が亡くなって49日となる。この間の葬儀は小ぢんまりしたもので、けして賑やかではないけど悲しみに打ちのめされているわけではない、笑って送れる良いものだったと思う。

両親が共働きだったから、学生時代は祖父母の住んでいる町で1日の大半を過ごした。だから、祖父との思い出も下手したら父親よりもあるのではないのかと思うんだけども、記憶として残っているのは何でもない風景ばかりだった。寝転がってテレビを見ている後ろ姿とか、近くの銭湯へ車で連れて行ってもらう時の車内とか、お気に入りの野球チームの試合を一緒に見に行ったりした時のスタンドとか、そういうもの。

高校を卒業したら地元を離れてしまったから、大人になって深い話するほどの機会もなく、最後は手術をして声がでなくなってしまったので、言葉や会話として残っているものは殆ど無い。頻繁に帰省はしてた方だと思うから、後悔もやり残したこともそれほど無いのだけれど、元気なうちに旅行にでも連れてってあげればよかったなぁ、とは思う。

祖父は煙草を吸っていた。お気に入りの銘柄はピースで、今考えるとそんな強いもの毎日吸うんじゃないよとは思うけど、それのせいかピースの煙の匂いがすると、私は少し落ち着く。

まだいなくなって日が浅いから、祖父のことを「思い出す」時間が多いけれど、どの記憶も、鮮明なまま持ち続けられるわけではないだろう。人生の膨大な記憶達の中に、ひとつひとつ紛れていって、少しずつ色褪せていく。それでも私は多分これからも覚えている。ピースの匂いがしたら、ぼんやりと彼のことを思い返してはまた仕舞い込んで、大切に取っておく。

@namisaki
年中アイスコーヒー飲んでる