今年度分の有給が支給された。そういえば自分が3月入社だったことを思い出した。勤続10年経ったらしい。入社して10年、某政令指定都市に拠点を移して10年。田舎で生まれ育った私にとって、この土地の文化資本の豊かさには目を見張った。東京へのアクセスも格段に良くなり、東京でしか上演していない舞台も観に行けるようになった。コンスタントに遠征できる環境になって、特定の役者を追いかけて観劇する、いわゆる推しが出来たのもこの頃だった。そんな時期に突然両親が他界した。新しい仕事にも、新しい土地での生活にもまだ慣れないところに、様々な手続きや法事等の行事の執り行いに追われることになった。まさに悲しむ暇もなかった。悲しめなかったけれど、生活の目まぐるしさに反して心はぼんやりしていて、人生楽しいことが何もない、すべて投げ出したいと常に考えていた気がする。その時に心の支えになったのが推し活だった。チケット代と遠征経費を捻出するために、どれだけ無気力に苛まれても仕事は続けた。その先に楽しみな予定があれば、気が重いタスクからも逃げ出さずに取り組めた。無気力に飲み込まれてうっかり死なないために推し活が必要だった。そうやって必死に1日1日を過ごすうちに10年経っていたらしい。
先日、自家用車を手放す決意をした。就職して車が必要になった時に両親が買ってくれた車。余談だがうちの両親は娯楽的な贅沢には厳しくて幼少期から流行り物はほとんど買ってもらえなかったけれど、こういう必要なものは高額な物でもポンと買ってくれる人たちだった。通勤に使わなくなり、最近はほとんど乗らなくなっていた車。所有しているだけでも年間で維持費はかかるし、もうだいぶ古くなって普通だったら買い替えを検討するような段階にきていたので、思い切って手放すことにした。親の代からお世話になっているディーラーへ問い合わせたら、名義とかちょっとややこしくなっている事情をすべて知っているので異様に話が早く、あれよあれよという間に本日引き取られていった。ここまで決意から1週間くらい。なんと呆気ない。
今、現場が一区切りついて土日に時間ができた。これを機に、今までだた習慣的に続けていたことを見直そうと思った。主にお金関係。車を手放したことは大きな出来事だったけど、スマホの料金プランなども見直したい。死なないために必要だと気にしてこなかった毎回の遠征経費も、そろそろ出費として重く見る必要があると思う笑 こうやって考えが変わってきたのは、精神が安定してきた証拠だと思う。10年前はその1日をやり過ごすのに精一杯だった私が、今は人生がこの先も続いていく前提で物事を考えられるようになっている。それは紛れもなく推し活が10年私の支えになってくれたからだと思う。これからの10年はどんな日々を過ごすだろう。何も大きなことは為せないかもしれないけれど、10年後の自分が振り返った時におおむね納得してくれてその先の人生をまだ続けてもいいかなと思ってくれたら嬉しい。