「よしとくん」という、横浜で働く母方の親戚がいた。祖母の末弟なので、大叔父にあたる人だろうか。祖母やそのきょうだい、母がそう呼ぶので私もそう呼んでいた。
めったに帰ってくることはなく、直接会ったのは片手で数えるほどだったと思うが、彼はよく幼い私に中華街でビーズ刺繍の靴を買って送ってくれた。
ベロアのような布地にカラフルなビーズが花火か花束のように刺繍されたその靴が大好きだった。サイズアウトしそうになっては、次は黒色の16cm、次は赤色の18cmがいいと母を通じてお願いしていた。
子ども用の靴だったので22cmまでしかサイズがなく、とうとう履けるサイズがなくなってしまい、そのうち「よしとくん」から靴を送ってもらうこともなくなった。よしとくんは港街で暮らすベールに包まれたおじさんだった。
五十代くらいで早くに亡くなってしまい、独身だったために祖母たちきょうだいが横浜まで行き、彼を現地で弔ってお骨を連れて帰ってきた。
彼の財布に私の幼少期の写真が入っていたらしい。
与えてもらうばかりだったが、彼にも何かを与えられていたのならいいなと思った。