ベッドの上で幻のディナー

ブチ
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さいきんずっと、寝ようとベッドに上がるとうっすらとお腹がすく。わたしは食事が特別すきではないのでこれは珍しいことで、たぶん寒くなって摂取カロリーが足りてないのだとおもう。それにしても、ベッドの上ではわりとちゃんとしたご飯が食べたくなるのがふしぎだ。おじやとかパスタとかだし巻き玉子とか。夢みるみたいにそういうものを食べたいなぁ、とおもいながら眠りにつくのに、いざ朝になって目が覚めてみると面倒が勝って、パンとプロテインと栄養剤とかで済ませてしまう。ベッドの上だから、肉体的な面倒を放り投げて幻想の食事を思い描いてるのかもしれない。布団のなかの想像ではわたしは食事をおいしく感じて豊かな時間を過ごしている。でも、そういう感覚を現実で感じるのはだいぶご無沙汰で、ああ食べた、おいしかった、という食後の充実も、かつてはあった気もするけれど、今では遠い。たぶん、人生で食べるものに極端な制限を課しすぎたせいかも。カロリーを気にした過度なダイエットとか、アトピー治療のための摂食制限とか、少食ゆえの細かい栄養管理とか。そうして食事が単純な楽しみから切り離された状態が続いた結果、いまではひどい偏食だ。むかしは食べられたのにいつのまにか食べられなくなってしまったものが、ずいぶんある。食事管理で食べたくないものばかり食べていた反動かもしれない。そんなんだからお腹は空いているけど食べたいものが思い付かない、という状態がよくあって、仕方ないから適当に用意するも食べる気にならなくて、無心で口に詰め込んだり、場合によってはわざわざ作ったものを食べられずにそのまま捨ててしまったりする。おいしいものがたべたいなあ。いや、たべることをおいしいとかんじたいなあ。ベッドの上にあらわれる幻のたべものたちは、たぶんそういう願望の呼び声。明日はマッシュポテトつくりをする予定。どうか、起きたままおいしい夢をみれますように。

@nananto0
ガイトウ(街灯/外套) ことばで照らしたり、ことばを羽織ったり。