君の指差す、夏の大三角にならないなにか。

ブチ
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定職が決まるまで、日雇いからの日雇い労働の日々を過ごしている。昨日今日と同じ倉庫現場でちがうひととお昼をご一緒したんだけど、偶然にもふたりとも日勤した数時間後に派遣会社を変えて夜勤をする予定らしく、「元気すぎ~?!」と日を跨いで全く同じリアクションをしてしまった。実際は元気とか元気じゃないとか関係なくひとにはそうせねばならない時があるだけなんだろうけど、そこを慮ってもしょうがないし、たまたますれ違った通りすがりとしては「元気すぎ~?!」と笑うくらいがちょうどいい。日雇い現場で話すひとって、大抵は名前もろくに訊かず二度と会わないだろう人がほとんどなのに、なぜか別れ際には「またどこかで会ったらよろしく」と言い合うことが多い。逆説的な話、偶然すれ違っただけだからこそ「またどこかで」という言葉が真を帯びるのだとおもう。縁もゆかりもなくても人は何かにたまたま出会うし、何かにたまたま出会わない。ここでたまたま出会ったのだから、違うところでたまたま出会うこともあろうという、乱数への信頼。乱数への愛と、生きることの得意さって正比例な気がする。かくいうわたしはまだまだ、随所に運命とか物語を見いだしてどうにか日々を乗り越えている状態。物語ばかり好んできたので、点と点を線で結ぶのがだいすきなのだ。かつて観た一番すきな劇団の最終公演に、正体の分からない長い長い糸をひたすら辿っていったら先には何もなくてただぷつりと切れているだけだった、というエピソードがある。糸を辿っていたふたりは、仕方ないのでとりあえずそこで踊りだす。歩いてきた先には何もなくて、でも糸を辿ってきた自分はそこにいる。点と点を結んだ線つなぎが最終的にはなんの星座にもならなくても、そこで歌って踊れたらいいね。

@nananto0
ガイトウ(街灯/外套) ことばで照らしたり、ことばを羽織ったり。