かわいさをわらうな

ブチ
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ある存在を「かわいい」と思う感情には、その存在を自分より下にみるという加害性が少なからず含まれると思っていたけれど、これはもしかして「笑わせる/笑われる」と同じようなものなのかもしれないなあ。つまり、主体的にかわいさで相手を支配(魅了)するか、受け身で可愛いと舐められるか、みたいな話。この社会は、自ら発信していない「かわいさ」を発見することの加害性に無自覚すぎないかと、たまにぞっとする。「かわいい」という感情はほとんどの場合、自分よりも愚かで隙があって力の弱いものに向けて発生する。自分に危害を絶対に加えないと分かっている相手に向けてだけ生まれるのだ。そしてしばしば「かわいい」と「笑う」はセットになって場を支配し、「かわいい」と「笑われている」存在はその場で無力な存在として規定される。かわいい無罪。かわいいから無罪、じゃなくて、かわいいと思ってるだけだから笑っても無罪。個人的なことをいうと、わたしは舐められるのがこの世でいちばんいやなので、かわいいと笑われることにまったく寛容になれない。なにせかわいい無罪なので、寛容になれないことを訴えても更に笑われるだけなのが質がわるい。うちに住み着いている綿さんはみんな世界一かわいいけれど、わたしはかれらをを絶対にわらわない。星ひとつ生み出せるほどかわいくって、勇敢で、ふわふわなかれらをわらうなんてとんでもない。かわいさを称えよ。かわいさの裏側にあるのは、愚かさではなく生命力だ。かわいさを称えよ。このマウンティング取り合い地獄から抜け出すために。

@nananto0
ガイトウ(街灯/外套) ことばで照らしたり、ことばを羽織ったり。