飛び立つよりも少し前

ブチ
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公開:2024/7/21

大荷物でグリーン車に乗り、ワッフルをたべる。メープル風味の小麦粉は少しだけさくさくとして、やさしいエネルギーの味だ。日差しは好きだけどさすがに朝日が強いから、ブラインドを下げてみる。うーん、密室みたいになってかなしい。ちょっとだけ空けてみて、すこーしずつ上にずらして丁度いいところをさがして、半分くらいのところで止めてみた。うん、これがいい。ほどよく明るくて、ほどよく守られている。ご機嫌で前を向き直せば隣の席で、ひとり分の空白が明るさを受け止めているのが目にはいった。ああ、自由だな。わたしもいつかこういう空白になって、誰かの明るさや白さを受け入れるだけのものになりたいな。そんな空想をしながらも、わたしの体はそれなりの重さを柔らかい椅子に預けつつ、呑気に伸びなんかしてる。背伸びって、羽ばたく前の仕草に似てる気がしませんか?毎朝、飛び立ちたくて空をみて、空をみることでまだ地上で生きていこうとおもえるのかも。逆説というわけ。あ、線路が地下にはいった。どうもやっぱり、飛び立つにはまだ早いみたい。数キロ先、また地上で会いましょうね。

@nananto0
ガイトウ(街灯/外套) ことばで照らしたり、ことばを羽織ったり。