信号は青

ブチ
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公開:2024/11/27

夜の方がよく光るものがいくつかある。月、コンビニ、そして青信号。暗い道路をひとり歩いていて、あちらに行きたいわたしは立ち止まる。目の前には黒々とした車道があるけれど、大きな音を立てる走る機械なんて夜はほとんど通らない。その気になれば自由に渡ってしまえる。でも、自由にできるってことは簡単にできるってことじゃない。例えば自分の体の輪郭がいまいちはっきりしないような時間とか、一日のあれこれで疲れきってしまっているときとか。そういうときは、自由ってだけじゃだめなのだ。自由は無風のことで、そこにはやさしい風も向かい風も吹いてないから。人間は、風のない場所で行き先を決めるのが昔から苦手。そうして立ち尽くしてると、ほら、向こう側に青いシグナルが灯る。いいよ、おいで、とゆるしてくれる明かり。涼やかな風が吹いて、わたしは歩き出すことができる。地球の半分は昼で、半分は夜。その上にある信号の半分は赤で、半分は青。この瞬間にもどこかの信号は青に変わって、誰かをゆるしているんだろう。夜に灯る青い明かりを目印に、ありがとう、これからも何処までもゆくよ。

@nananto0
ガイトウ(街灯/外套) ことばで照らしたり、ことばを羽織ったり。