走る電車とふるえるアイデア

電車で初老の女性に席を譲るか迷う。絶対に立つより座った方が楽に決まってる。これはもう９割くらいの人類がそう。だけど、席を譲られることで「そんな年なのか」とショックを与えてしまったらどうしよう。生まれて三十年以上経つのに、まだこんなことで悩む。人の隙間から向かいの窓を睨んで考え、ひらめいた。譲って微妙な顔や反応が返ってきたら「(自分の)母より年上のひとには譲ることにしてるんです～」と返そう！それなら、相手もいやな気持ちになりにくいだろう。この方法なら、目の前のひとに限らずこれからすべてのひとに禍根なく席を譲れる。あまりにもいいアイデアにうち震えたときに、ちょうど電車が駅に到着し、その女性は降りていった。車内に取り残される震えの余韻とナイスアイデア。次の電車では、あのひとが座れるといいな。ナイスアイデアをなくさないよう握りしめ、今後は絶対に譲ろうと決めるのでした。めでたしめでたし。