明ける前の朝は夜。

ブチ
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かさりと玄関から音がして、ああ新聞がきたなとおもう。午前4時16分。カーテンの向こうを覗いたらまだ夜明けの気配はなくて、暗い静かな街を新聞の束を持って走り回るのはどんな気持ちだろうと想像する。訊いてみたいけど、訊けることはないんだろうな。ドア一枚を隔てて新聞を配る人との距離は、近くて遠い。あのひとはきっと、毎日、朝焼けをみているんだ。もう見飽きているだろうか、それとも新しく塗り替えられていく世界になにがしかの感慨を抱くのだろうか。知りようのないあのひとの胸の内を思って、ベッドに横たわるわたしのこともきっとあとひとは知りようがない。夜明けまで、あと1時間32分。

@nananto0
ガイトウ(街灯/外套) ことばで照らしたり、ことばを羽織ったり。