ひとり暮らしを始めてそれなりに経つ。
帰省すると母の料理が机いっぱいに並ぶ。夢のようである。どれも美味しいので、自分の家には本当に帰りたくなくなる。
実家にいたときは、料理をほとんどしなかった。そもそも興味がなかった。お菓子づくりも興味がない。
上手くできる保証はないので、新作のスイーツをコンビニで買うことの方がずっといいと思っていた。絶対に自分で作るよりも美味しいし安く済むし。
これは社会人になっても変わらないだろうなと思っていたのだが、いざひとり暮らしを始めてみたら、意外にも「料理をしてみよう」という気力が湧いたのだ。本当に不思議である。
絶対に買ったお弁当の方が美味しいと決まっているのに!!
初めてのひとり暮らしだったからか、何でもやってみたかったのかもしれない。
野菜の安いスーパーを休日に探し歩き、食材ごとの最安値をスーパーごとに把握しようと頑張っていた頃もあった。今思えば、手間と時間をお金で買ったと考えて、近所のスーパーでまとめて買い物を済ませた方が結果的に安かったと思う。
安いからといって野菜を買いすぎてだめにしてしまうことは今はあまりしなくなったが、どうしてあんなに料理をしなかったのに、こんなに頑張っているのか…本当に不思議でならない。
どうせ、わたしのためだけのご飯なので、凝ったものは作らない。(作れない)
味付けもネットで検索したときに、1番上のサイトに載っていた黄金比がベース。あとは具材が日により違うだけ。
料理だなんて呼べないし、何て言う名前の料理なのかも分からない。
余り物のなんちゃって料理なので、職場の人に聞かれるといつも困るのだ。
何年経っても料理が美味しく作れないので、食べるときはいつも少し悲しい。
だからといって、和洋中なんでも作れるようになりたいかというとそうでもないのだ。
だって自分しか食べないのだから。
たまにフライパンの余熱がまだ残った作りたての温かいご飯を食べられたら、それで満足してしまうのだ。それだけでも料理した甲斐がある。
自分にとっての「料理」のハードルはとても低い。意図的に低く設定している。
美味しいものを振る舞うとかじゃなく、人間的な生活のひとつとして。
どんなに仕事ができなくて落ち込む日があっても、自分が生きるために料理できること、洗濯などの家事ができることが、わたしにとって、とても全うに生きられているという支えになっている部分があるような気がする。
まだ大丈夫って自分自身に思えるものが、わたしにとっての「自炊」
苦手でも何だかんだ続けられているのは、そういうことなのかもしれない。