※ネタバレしかない
とても好きな推理小説作家、麻耶雄嵩の
化石少女 (徳間文庫) https://amzn.asia/d/czpC7YI
化石少女と七つの冒険 https://amzn.asia/d/1EIqwPi
についての書き散らし。
(化石少女は初版の単行本を所持しているので、文庫版では改訂されているかもしれない&それによる私の読み違えがあるかもしれない)
化石少女
まりあが推理を披露し彰が否定する、という形が基本形で、第一話読んだ時点では「うん?解決せずに終わるんだな?スッキリせん」と思ったが
それも数話続くと「推理というロジックがあれば良い」という形式のミステリなんかな〜、と慣れてくる。
まりあの推理内容(主にトリック)がけっこうぶっ飛び系まではいかないものの現実味が薄い感じなのと、まりあのキャラクター性のおかげでそのへんは上手く処理できてる(むしろ、この推理で解決するのはちょっと現実味薄いし、推理案の一つとして見といていい感じなのかな、と思わせるのが丁度いい塩梅な気がしてくる)。
それが「エピローグ」で「あっ、あれ全部正しい推理だったと処理して良いやつなんだ?!」となるのはある種カタルシス(正直、体育用具室の物理トリックもかなり現実的じゃない)。
で、数話分かけて書かれてきた彰の行動原理からすると動機は一番しっくりくるのはさすが。
ここでまりあの推理の検証を合宿所での車追突トリックしかしていないのに他の推理もすべて「正しかった」とするのはちょっと大雑把すぎないか?と思っていたら、
七つの冒険で「他も概ね正しいと検証していた」の描写があったのでまあ納得。
ただ、まりあの推理を否定してきた彰のおかげで、冤罪逮捕がまかり通ってるし真犯人はほぼ捕まらず野放し、しかも続編の七つの冒険に皆素知らぬ顔で出てくるあたり倫理観とかは無い。これはそういう系ミステリと思って割り切れる人向け。
わたしはミステリとしての話が面白くて話の中でストーリー筋が通っていればその辺は気にしない。
あくまでフィクションなので。
七つの冒険
基本形はまりあの推理を彰が否定する形式は継続、否定動機は若干の変化あり。
第一話で東海林(しょうじ、じゃなくてとうかいりん)なら高萩より出席番号が遅いからまりあの推理は成り立たない、と否定するのだが、次話以降で高萩が犯人なのは確定の様子なので「その推理否定は結局真相はどうだったん?!」となるけど、
麻耶雄嵩式というかメルカトル鮎に慣れていると「物語の中で犯人と断定されたものは、絶対的に犯人」なのが染み付いてるから「そうなんだ」で読めちゃうな。
もう一度読んで細かい手がかりを整理したらきっちりした解答が出るかもしれないけど(麻耶氏はそのへんの隙のなさはけっこうしっかり検証して作っている印象。木製の王子の超細かいタイムスケジュールとか、答えのない絵本とか。)
化石少女の犯人の一人の渚がまりあを探偵として推薦するのは「えっ!?」となるけど、まりあのほぼ正解推理は彰しか聞いていないので渚的には「的はずれ推理する探偵」として推した可能性もある?
彰の闇落ち度。
この辺まりあは推理してなくて彰だけが真相にたどり着いてる。
いきなりだったら「スッキリせんなあ」と思いそうなところを(「探偵が皆を集めてさてと言い」みたいなベタな状況が好き)それまでの過程を経ているから何となく読めちゃう。
まりあの正しい推理を否定するために、必死に推理する彰、が基本パターンなので彰だけが真相にたどり着いてても何か大丈夫。
「正しい推理をする探偵と、探偵の推理を否定するために推理するワトソン」て感じかな?
赤点探偵と腹黒ワトソン。
この辺りの彰闇落ち時期ではまだ、いずれ高萩を何とかして元のまりあと彰の探偵助手コンビに上手く戻ってくれ、等と思っていた。
探偵と助手の関係性が好きなんだよな〜。
≒彰救われてくれ、なんだけど、しばらく新作読んでなかったからコレが麻耶雄嵩だという意識が少なくなっていた……。
最終話の人物誤認叙述は「蛍」と手法が同じなのでそのパターンね、なのだが
最後8ページの彰闇落ち具合がすごいね〜!来たコレ!
救われるとかないねん、闇落ちしたらとことん闇っていう方向性できたか!
探偵と助手、の関係性をこね回してる(私もそれが好きだし)麻耶氏だがまさか、探偵と助手(殺人犯)助手(殺人犯)のトリオになるとは思わなかった。
殺人する助手、推理する探偵、推理を否定する助手、で完璧な三角形が出来てしまっているのに震える。
いや〜やられましたな……最高だぜ麻耶節。
高萩がまりあと付き合うのは自然な流れだと思ったけど、第一話での高萩の犯行動機は痴情のもつれだよな?その時の彼女は?とも思ったがまあ高校生の恋愛事情なんてそんなものか。数カ月は経ってるし。