丸太町ルヴォワール (講談社文庫) https://amzn.asia/d/1WUQNvu
疑似裁判バトルもの?
“疑似”なので被告人、検察側、弁護側、裁判長、傍聴席、にあたる役割はあって裁判形式で進むけど法的拘束力はないし、必ずしも法的に正しい証拠を出すとは限らない。偽の証拠やハッタリをかましてでも、論理で相手側を言い負かせば勝ち、裁判長を言いくるめれば勝ち、傍聴席(もはや観客席)の心を動かせば勝ち、みたいな所がある(もちろんイカサマやハッタリは見破られないようにやる、バレなければオッケーみたいな)。
検察官と弁護士にあたる者は号を名乗り、衣装を纏い、必殺技名とともに論理で突き刺す。論理バトルショー。
すっかりTwitter人としておなじみの円居せんせ↓
のルヴォワール4部作の1冊目かつデビュー作。
円居せんせ本人が「俺がTwitterに染まる前の作品」と言ってるようにとてもロジカルミステリ然としている。いや、他がちゃんとしてない訳じゃないけど、本人が「ミステリコンサルタント(犯罪コンサルタントex.モリアーティ教授のもじり)」と言うように最近はミステリゲームのシナリオや漫画原作とかで忙しく小説を読めるほうが稀という状況になっているので。ミステリコンサルタントはノリでツイートしたと思うけど実情がわりとそれに合ってしまっているという……。
逸れる話だが円居せんせは「ツイートは目にするけど著作は読んだことがない」とフォロワーに言われるくらいTwitter人していて、まじで一日中Twitterにいるし世間の話題にも乗るし公開すぐの映画も感想言ってるし「松屋で昼飯食った」レベルのプライベートもばんばん明かしているけど、一切炎上しないし危ういなと思うツイートも無いというインターネットバランス感覚に優れた人。というか長年のツイ廃だからこそなのか?とにかく世の炎上しがちな作家・漫画家・バンドマンはこのへんのバランス感覚見習ってほしい。「作品は好きだけどTwitterでがっかりした」は味わいたくないですね。「作品は知らないけどTwitterは見ている」も良いのかどうか分からんが……。
※以下内容ネタバレ
読んだのがだいぶ昔の再読だったけど大筋は覚えていた。
第一章の地の文が一人称語りなのが目が見えないという事の叙述だけど、それのための一人称と思わせておいて後半の盗聴されているからあえて嘘を交えて話した、に効いているのが良い。一人称で嘘を交えて話した内容なら地の文に嘘は無い。ストーリー構成としてもここの論語の語りが事件の詳細と物語の大筋(論語がルージュに再び出会うための物語)を表しているので最初にテーマがはっきりして入りやすいんじゃなかろうか。
携帯電話で心臓ペースメーカーに誤作動を起こさせる、という殺害方法は2024年現在では完全に「ありえんな」の域だけど、初出当時ではまだその可能性があると言われていた頃?なので時代背景を考えれば有りなのか。もちろん作中でも確実性がない、と言いつつ用意しているし真相は殺害されてはいないんだけど。現代に初読だったらそこに違和感感じて最後まで読んでくれないかもしれないレベルで引っかかりはする。このへんが「ちょっとだけ古い位の時代のほうが細部が気になって没頭しにくい」の典型例な気がする。
河原町祇園じゃあるまいし、みたいなセリフが出てくるので麻耶雄嵩オタクとしては喜んでしまう。というか龍樹の姓は許可取ったんだろうか。まあ円居も挽も麻耶せんせの命名だしな。そして文庫本無くしちゃったからKindle版買いなおしたけど、全面改稿文庫版では解説・麻耶雄嵩だったのか。じゃあ大丈夫か。何にせよ麻耶オタクとしてはわりとそれだけで嬉しいところはある。
関係ないが、京都の大学へ行った元同級生が西尾維新の戯言シリーズファンで京都の土地巡りをしていたのだが、何ならルヴォワールも巡れるんじゃないか?京都は観光客が多すぎてそれどころじゃないかもしれないか……。
流の性別を誤認させる叙述トリックは章ごとに視点人物が変わるのと三人称視点で書くことで成り立ってる(彼は彼女はを出さないのと、流の一人称セリフを出さないのは、そりゃそうなんだけど上手く出来てるよね)、と、そのためにやっているのかと思わせつつ実は撫子=大和の叙述トリックのカモフラージュである(流の性別が中盤で明かされるのでより一層)のが第一章とも通じるけど本当、構成がまあよく出来てる。入魂のデビュー作って感じだ。全面改稿でこうなったのかもしれないが。
再読なのでわかってはいたけど、論理バトルで嫌疑を晴らすことが目的ではなくてルージュを探す事が論語の目的なので、論語が黄龍側に立つのは「そっか〜」と思って読んじゃったけど初読だったらけっこう面白い展開来た!ってなったのでは。どう思ったか覚えてないけど、ここでテンション上がりたかった。論語VS達也の展開も熱い!ってなるところよね。
最後もロマンチックな終わり方だし、あっあの円居せんせがこんな物を……と思ってしまうのは普段Twitter見すぎの弊害かも……。
はてさて、シリーズの続きをおそらく読んでいなかったと思うのでこの勢いで、残りも行きたいですね。でもキングレオ行っちゃうかもしれん。