第一歌集でその当時の私のやりたいことは大体やれて、そのあと何しようかな?というのは思ったより悩まなかった。さいわいにして歌集はある程度話題になり色々言及していただいてありがたいことだった。けれどもあそこにはまだ他の人に手をつけられていないトピックが残っている。
他の人が手をつけていない、のには勿論それなりに理由があって、いわゆる上手い歌、のような修辞のプロトコルを外した歌は、少なくとも新人賞の価値判断では分が悪い。口語短歌の修辞のプロトコルをどこまで拡大解釈できるか、が『光と私語』以前の10年だったとして、そこについてはいくつかの先例を出せたのではないかと思う。
第二歌集を出そうと決めたのは、『光と私語』以降の短歌(のようなルートがあるとして)を作るのは、『光と私語』の作者自身であった方が都合が良いと思ったからだ。『光と私語』の修辞のプロトコルを拡張するのは自分自身でありたい、というプレイヤーとしてのエゴに、見合うだけの歌群が、四年かけてようやく揃えられたと思っている。